疾患を疑うポイント
●心筋壁肥厚を伴う心不全や蛋白尿,末梢神経障害などを有する場合に血清・尿M蛋白の有無について検索し,組織でのアミロイド沈着を証明する.
▼定義
アミロイドーシスとは,アミロイドとよばれる線維性の異常蛋白が特定の臓器または組織の細胞外に沈着してそれらの臓器の機能障害を引き起こす疾患の総称である.アミロイド前駆体の種類により病型が異なるが,ALアミロイドーシスは代表的な病型であり,骨髄における異常形質細胞より産生されるモノクローナル免疫グロブリン(M蛋白)の軽鎖(L鎖)に由来するALアミロイドが沈着して発症する形質細胞異常症である.
▼疫学
まれな疾患であるが,アミロイドーシスのうち,わが国で最も頻度が高いのはALアミロイドーシスであり,年間発生率は約3~5人/100万人である.わが国における後方視的解析では,発症年齢中央値は58.7歳±9.5歳である.
▼分類
ALアミロイドーシスは,明らかな基礎疾患のない原発性と,多発性骨髄腫や原発性マクログロブリン血症に合併する続発性とに分類されていたが,実際には両者の鑑別は困難なこともあり,現在では両者をあわせて原発性ALアミロイドーシスとしている.ほかのアミロイドーシスの病型としては,①トランスサイレチン(transthyretin:TTR)遺伝子変異に起因する変異TTR蛋白を前駆物質とする遺伝性ATTR,②関節リウマチなどの慢性炎症患者における血清アミロイドA(serum amyloid A:SAA)の過剰産生によるAA,③長期透析患者における血中β2ミクログロブリン持続高値によるAβ2M,④加齢現象に付随する老人性ATTRなどがある.また,病変の広がりにより全身性と限局性に分けられる.
▼徴候・診断
➊徴候
蛋白尿と心不全が二大症候である.心アミロイドーシスではアミロイド線維が心筋の細胞外に沈着し,心室壁の肥厚に伴う拡張