▼定義
H鎖病(重鎖病)は,単クローン性に免疫グロブリン重鎖のみの過剰産生を特徴とする腫瘍性のB細胞性リンパ形質細胞増殖性疾患である.H鎖は一部が欠損しており,軽鎖が結合しない.
▼分類
H鎖の種類により,γ鎖病,α鎖病,μ鎖病に分類され,それぞれ臨床像が異なる.まれな疾患であるが,α鎖病の頻度が最も高い.なお,重鎖沈着症(heavy chain deposition disease)は単クローン性免疫グロブリン沈着症に属する別の疾患概念である.
➊γ鎖病
1964年にFranklinらが初めて報告し,これまでに130例余りが報告されている.やや女性に多く,年齢中央値は68歳である.IgG重鎖の一部が欠失するため軽鎖と結合しない分子量27,000~49,000のγ鎖が血清中に検出され,蛋白電気泳動ではβ~γ位にM蛋白として認められる.初発19例のM蛋白量の中央値は,1.59g/dL(0.40~3.91g/dL)であった.IgGのサブクラスではIgG1が多く全体の65%を占め,ついでIgG3,IgG4,IgG2の順となる.
病像は表8-61図に示す3病型に分類される.最も多い病型であるdisseminated lymphoproliferative diseaseでは,全身リンパ節腫脹,肝脾腫などを伴う.骨髄や病変部の病理所見では,リンパ形質細胞の浸潤がみられ,これらはB細胞マーカーを有し,細胞質のγ鎖が陽性である.骨髄ではマクログロブリン血症に類似した像を呈する.
自己免疫疾患を有する場合はその治療を行うが,無症状であれば無治療で経過を観察する.悪性リンパ腫を有する症例では化学療法を行い,CD20陽性例ではリツキシマブ薬を併用する.無治療で長期間経過する例から,短期間に急速に進行し死亡する例まで予後はさまざまである.Mayo Clinicからの報告では,生存期間中央値は7.4
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