診療支援
治療

3 進行性核上性麻痺
progressive supranuclear palsy(PSP)
饗場 郁子
(国立病院機構東名古屋病院・脳神経内科・リハビリテーション部長)

疾患を疑うポイント

●50~70歳代に発症し,初期からよく転ぶ.

●垂直方向優位の眼球運動障害を認める.

●無動・強剛などパーキンソニズムがみられる.

●進行が比較的速い.

学びのポイント

●Parkinson病と動作緩慢・無動など共通であるが,Parkinson病と異なり,強剛は四肢よりも頸部や体幹のほうが強い.

●前頭葉徴候や前頭葉性認知症を合併する.

●L-ドパをはじめとした抗Parkinson病治療薬の効果が乏しく,Parkinson病に比べ,機能予後,生命予後が不良.

▼定義

 脳幹,大脳基底核,前頭葉などが変性し転倒を伴う姿勢保持障害,垂直性注視麻痺,体軸性強剛,認知症などを呈する進行性の神経変性疾患である.

▼病態

 脳幹,大脳基底核,前頭葉などが変性し,異常リン酸化タウ蛋白が沈着する(図10-61)

▼疫学

 わが国では増加が報告され,有病率は10万人あたり約18人とされる.

▼分類

 典型例はRichardson(リチャードソン)症候群(PSP-RS)とよび,垂直性核上性注視麻痺および早期の転倒を伴う著明な姿勢保持障害を呈する.

 その他,Parkinson(パーキンソン)病と似た経過をとる病型(PSP-P)やすくみ現象が長く先行する病型(PSP-progressive gait freezing:PSP-PGF)などが知られている.

▼診断

臨床症候

1)垂直性核上性注視麻痺

 初期には現れず,2~3年たってから出現する場合が多い.進行とともに水平方向にも障害が現れる.

2)転倒を伴う姿勢保持障害

3)構音障害・嚥下障害

4)認知症

 前頭葉性の認知症,把握反射など前頭葉徴候を認める.

検査所見(表10-34)

鑑別診断疾患の除外(表10-34)

 最も鑑別すべき疾患はParkinson病である.

▼治療

治療目標と原則

 根治療法はなく,対症療法および転倒や肺炎などの合併症治療・予防が中心である.

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