疾患を疑うポイント
●動揺性歩行,腓腹筋肥大,Gowers徴候,著しい高CK血症を呈する男児・男性.
▼定義
X染色体短腕Xp21.2にあるジストロフィン遺伝子変異によりジストロフィン蛋白が欠損して発症する進行性筋ジストロフィー.
▼病態
ジストロフィンは筋鞘膜直下に局在する分子量42万7,000の巨大な桿状蛋白で,ジストログリカンやサルコグリカンとともにジストロフィン糖蛋白複合体を形成する.この複合体は細胞内のアクチン線維と細胞外基底膜成分ラミニンをつなぎ,筋収縮に伴う機械的ストレスから筋鞘膜を保護している.ジストロフィンが欠損すると正常な複合体が形成されず,筋鞘膜が脆弱化して筋細胞が変性・壊死に陥る.
ジストロフィン遺伝子変異の60%がエクソン欠失,10%が重複,30%が微小変異である.エクソンの欠失でフレームシフトが生じればDuchenne(デュシェンヌ)型(DMD)となり,インフレームの場合にはBecker(ベッカー)型(BMD)となる.点変異の場合,ナンセンス変異はDMD,ミスセンス変異はBMDとなる.
▼疫学
DMD発生率は新生男児3,500人に1人,有病率は人口10万人に5人.BMDの有病率はDMDの約1/10といわれている.
▼分類
DMDはジストロフィンの完全欠損により幼児期に発症する重症型.BMDは不完全欠損による良性型(15歳で歩行可能であることが目安)である.
▼診断
家族歴,臨床像,高CK血症などから本症を疑った場合,遺伝子検査や生検筋の免疫染色により確定診断する.
➊家族歴
X連鎖劣性遺伝形式で男性が発症する.家系内に発症者がいれば診断の手がかりになるが,患者の1/3は新規(de novo)変異である.
➋臨床像
生下時には異常はなく,いったんは歩行能力を獲得する.DMDは2~4歳頃になって転びやすい,階段が昇りにくいなどの症状で発症する.病初期から腰帯部の筋肉
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