疾患を疑うポイント
●中枢性めまいは随伴する神経症候で鑑別する.
●末梢性めまいは眼振により診断する.
学びのポイント
●中枢性めまいと末梢性めまいの鑑別が重要.
▼病態
めまいは,平衡感覚を司る前庭感覚,視覚,深部感覚の情報間のミスマッチや統合異常で生じる異常感覚である.
▼疫学
脳に起因する中枢性めまいは少なく,耳に起因する末梢性めまい(前庭感覚入力異常)は多い.
▼分類
➊中枢性めまい
中枢性めまいで最初に考慮しなければいけない疾患は,脳幹や小脳の血管障害である.中枢性めまいの特徴は,①めまい以外の神経症候を伴う,および,②視覚や深部感覚による補正が効きづらい,という2点に要約される.
➋末梢性めまい
末梢性めまいは,前述した良性発作性頭位めまい症と,それ以外の一側末梢前庭障害〔前庭神経炎やMénière(メニエール)病など〕に大別できる.末梢性めまいは,①めまい以外の神経症候を伴わない,および②視覚や深部感覚による補正が効く,という特徴があり,眼振が診断の決め手になる.
▼診断
めまいの診察は,手順をあらかじめ決めておくとよい(図10-97図).最初にめまい以外の神経症候を探すことで,脳幹と小脳上部の障害をスクリーニングする.続いて眼振により末梢性めまいを鑑別する.Frenzel(フレンツェル)眼鏡を用い,Dix-Hallpike(ディックス-ホールパイク)法での回旋性眼振(後半規管型良性発作性頭位めまい症),supine head-roll testでの方向交代性眼振(外側半規管型良性発作性頭位めまい症),頭位によらない方向固定性水平性眼振(良性発作性頭位めまい症以外の末梢性めまい)の3種類の眼振を探すことで,末梢性めまいはスクリーニングできる.めまい以外の神経症候のなかで,体幹失調だけは臥位のままではわからないため,最後に小脳下部障害由来のめまいで出現する体幹失調を確認しておく