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(1)溶血性連鎖球菌
hemolytic streptococcus
関 雅文
(東北医科薬科大学教授・感染症学)

▼定義

 直径1μmくらいの球菌で,鞭毛や芽胞はない.鎖のよう(連鎖状)につながった配列をしている.莢膜はつくるものとつくらないものがある.

▼分類

‍ Brownの分類とLancefieldの分類があり,組み合わせて用いる.

溶血性による分類(Brownの分類)

 血液を加えた寒天培地で培養,コロニーの周囲に溶血環をつくるものとつくらないものがある.

α型溶血:コロニーの周囲に緑色の溶血環をつくる.緑色連鎖球菌(viridans group streptococci)と総称する.

β型溶血:コロニーの周囲に無色透明の幅の広い溶血環をつくる.溶血性連鎖球菌(β-hemolytic streptococcus)といい連鎖球菌属のなかで最も病原性が強い.化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)はこの型に含まれる.

γ型溶血:コロニーの周囲に溶血環をつくらない.非溶血性連鎖球菌と総称され,病原性はきわめて弱い.

血清学的性状(抗原性)による分類(Lancefieldの分類)

 溶血性を示す連鎖球菌(α,β型)を,菌体が産生する多糖体の抗原性によって,A~T(I,Jはない)の18群に分類する.ヒトに対して抗原性があるのは主としてA群(90%)であり,その他B,C,F,G群に病原性がある.

 なお,溶血性連鎖球菌(溶連菌)は,酸素に曝露すると不活化しやすいストレプトリジンOと不活化しないストレプトリジンSの2種類の溶血毒(毒素)を産生する.ヒトが溶連菌に感染すると,ストレプトリジンOに対する抗体(antistreptolysin-O antibody:ASLO)がつくられるので,血清中のASLO価を測定すれば,溶連菌感染の有無が推定できる.

◎化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)

‍ 化膿性連鎖球菌が,溶連菌の代表的菌種である.

▼分布

 主としてヒトや動物の上気道粘膜に常在する

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