診療支援
治療

5 リステリア症
listeriosis
高橋 洋
(坂総合病院・副院長)

▼病原菌

 通性嫌気性の無芽胞グラム陽性桿菌であるListeria monocytogenes(図11-19)に起因する動物由来感染症である.リステリア属のなかでは本菌種のみがヒトに病原性を呈する.

▼疫学

 本菌は世界中に分布しており多くの鳥類や哺乳類の腸管内に常在している.また土壌や河川,下水など環境中にも広く分布している.健常成人の腸管保菌率は1%程度とされている.

 ヒトへの主要な感染契機は汚染された食品の経口摂取であり,集団感染も国内外でしばしば報告されている.鶏肉,牛肉,豚肉,ミルク,チーズ,生野菜や果物など多彩な食品が潜在的な感染源となりうる.また本菌は一般的な冷蔵庫内の温度である4℃の低温環境でも増殖が可能である点にも十分な注意が必要である.潜伏期間は平均すると3週間程度と推定されているが,宿主の状態や菌量により1日以内から1か月以上までバラつきが大きく,原因食品の特定が難しい場

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