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治療

1 梅毒
Treponema pallidum infection,syphilis
山岸 由佳
(愛知医科大学大学院教授・臨床感染症学)

▼定義

‍ Treponema pallidum subspecies pallidum(T. pallidum)による感染症.

▼病態

 感染経路は主に性交渉や類似の行為で,口腔と性器との接触(oro-genital contact)や肛門と性器との接触(anal-genital contact)で感染する性感染症(sexually transmitted infection:STI)である.まれに接触感染や輸血による感染がある.皮膚や粘膜の微小な傷からT. pallidumが侵入することで感染し,局所で増殖したのち,やがて血行性に全身に散布され,種々の症状を引き起こす全身性の慢性感染症である.T. pallidumは感染直後から中枢神経系に浸潤することが知られており,早期神経梅毒(髄膜炎,脳血管型など),後期神経梅毒(神経麻痺,脊髄癆)などをきたす.梅毒症例ではしばしばHIVなどその他の感染症を合併している場合があり同時に精査が必要である.妊婦が梅毒に感染すると,経胎盤感染によって妊娠のどの時期であっても胎児に感染しうる.

▼疫学

 感染症法の五類全数把握対象疾患である.1999年の統計開始以来,2010年を境に感染報告数が過去最多のペースで増加傾向にあり,2016年は2012年と比較し約5倍の報告数であった.男性では同性間性的接触による感染者は2007年以降増加傾向で,2010年には男性異性間性的接触による感染者数を上回ったが,その後2016年では男性の異性間性的接触感染者は同性間の2.8倍となっている.また女性は異性間性的接触感染者が増加傾向である.先天梅毒は年間10人未満であったが,2014年以降10人以上で増加傾向にある.

▼分類

 治療の要否による分類は,活動性梅毒(治療必要),陳旧性梅毒(治療不要)に大別される.

 活動性梅毒のうち,病期による分類は,早期梅毒(感染から1年

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