診療支援
治療

3 アデノウイルス感染症
adenovirus infection
池松 秀之
(リチェルカクリニカ・代表取締役)

学びのポイント

●アデノウイルスはさまざまな臓器に感染しその病像は多彩.

●小児の呼吸器感染症の原因として重要.

●接触,飛沫,空気感染があり感染力が強い.感染拡大の予防に消毒が重要.

▼定義

 アデノウイルスはDNAウイルスでエンベロープをもたない正20面体構造である.人に感染するアデノウイルスは51型までの血清型が同定されており,A~Fの亜群に分類されている.52型以降,53,54,55型が全塩基配列による遺伝子型により分類されている.

▼病態

 感染は,患者の分泌物または汚染物(タオルや医療器具など)への接触により起こる.飛沫,空気感染もある.潜伏期間は,一般的に5~7日である.アデノウイルスによる病像は多彩である.一方,感染が起こっても無症状であることが多い.

 呼吸器感染が多く,上気道炎と下気道炎のどちらも起こす.小児の呼吸器感染症の約10%がアデノウイルスによると推定されている.咽頭炎では,咽頭痛,咳嗽,鼻漏,その他の呼吸器症状をきたし,38~40℃程度の熱が3~7日続く.高熱にもかかわらず一般状態がよいのが特徴である.乳幼児では重篤な細気管支炎や肺炎などを併発することがある.肺炎は7型に多く,まれに起こる劇症型ウイルス性肺炎は死因となる.髄膜炎,脳炎,心筋炎などを併発することもある.

‍ 咽頭結膜熱(プール熱)は,主として3,4型による.夏季に屋外プールなどで広く感染することがあるため,プール熱ともよばれる.プール以外でも飛沫や糞便を通して感染する.11~12月の報告も多い.高熱,咽頭痛,扁桃腺の腫脹,結膜の充血がみられる.頭痛,腹痛や下痢を伴うこともある.39~40℃の高熱が間欠的に4~5日ほど続く.

‍ 流行性角結膜炎は主として8,19,37型などD種により起こることが多い.54,56型や4型の報告も多い.B種の3,7型やE種の4型によるものは軽症であることが多い.両側性のこ

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