診療支援
治療

5 ヒトメタニューモウイルス感染症
human metapneumovirus infection
池松 秀之
(リチェルカクリニカ・代表取締役)

学びのポイント

●生後6か月頃から感染が始まり,10歳までにほぼ100%が初感染を受ける.

●ウイルス分離は,分離率が低く臨床診断に利用することは難しい.

●小児では喘鳴を伴う喘息様気管支炎が多い.

●健康成人においては軽症の急性上気道炎の原因となる.

▼定義

 ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus:HMPVまたはhMPV)は2001年に発見された.パラミクソウイルス科ニューモウイルス亜科メタニューモウイルス属に分類される.エンベロープをもつ一本鎖(-)RNA ウイルスである.ウイルス表面には糖蛋白であるG蛋白,F蛋白およびSH蛋白をエンベロープにもつ.遺伝子の系統樹解析からグループAとBに分かれ,それぞれが2つのサブグループ1と2に分かれており,4つのサブグループ(A1,A2,B1,B2)に分類される.複数のサブグループが同時に流行するが,優位な流行株が地域で年度により変化しているという報告がある.

▼疫学

 hMPVは,急性呼吸器感染症の主要な原因ウイルスの1つで,国内では春季(3~6月)を中心に流行するが,その他の季節でも報告があり,通年性に存在している可能性がある.小児のウイルスによる呼吸器感染症の5~10%がhMPV によると考えられる.1~3歳の患者が多く,RSウイルスより少し遅れて初感染を受けるとされている.

 IgG抗体陽性率は移行抗体が消失する6か月~1歳未満が最も低い.生後6か月頃から感染が始まり,2歳までに約半数が,遅くとも10歳までに全員が感染していると考えられる.年齢を問わず,再感染がみられる.保育園などで乳幼児の集団感染がみられ,成人での集団感染もある.その際に肺炎を呈する重症例が多くみられることがある.

▼病態

 潜伏期間は4~6日で,発熱,咽頭痛,咳,鼻汁がみられる.上気道感染症(鼻炎,咽頭炎,副鼻腔炎)や,下気道感染症(細気管支炎

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