1　医療関連感染の諸問題 | 医学書院

▼定義

　病院，医院，施設，家庭など場所にかかわらず，医療行為に伴って引き起こされる感染はすべて医療関連感染とよぶ．医療行為が頻繁に行われている病院での感染伝播リスクが最も高く，これを最小限にするために｢感染対策｣の遵守が必須である．一方，医療関連感染に関してさまざまな問題が台頭してきており，主なものについて簡単に述べる．

▼諸問題

➊ホストのリスク因子の増加(日和見感染症)

　平成30年度版高齢者白書では，高齢化率は27.7％である．高齢者は，免疫機能が低下しているだけでなく，糖尿病，心不全，腎不全，血液腫瘍，固形癌，自己免疫性疾患などの基礎疾患をもつことが多い．さらに，高齢者に対する外科治療は増加しており手術部位感染も重要である．

➋各種デバイスの使用

　従来より，尿道留置カテーテル，血管内カテーテル，人工呼吸器に関連するデバイス関連感染が問題となっている．ポート，ペースメーカなどのようにデバイスを体内に埋め込むと感染リスクは低下するが，一度感染が起こると内科的治療は困難となる．

➌耐性菌に関する問題

　メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus：MRSA)，バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococcus：VRE)，薬剤耐性緑膿菌(multidrug resistant Pseudomonas aeruginosa：MDRP)，薬剤耐性アシネトバクター(multidrug-resistant Acinetobacter baumannii：MDRA)，多剤耐性結核菌(multidrug-resistant Mycobacterium tuberculosis：MDR-TB)，基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase：