疾患を疑うポイント
●気管支喘息の治療経過中に長引く粘稠な喀痰を伴う湿性咳嗽を認める.
●上記のような症状に加えて胸部X線,CTなどで繰り返す浸潤影を認める.
学びのポイント
●真菌による感染症ではなく,下気道に入り込んだ真菌が腐生し持続生息することにより,Ⅰ型・Ⅲ型アレルギー反応を生じる疾患.
●気管支鏡所見での区域気管支以下を閉塞する粘液栓子の観察が重要.
●血液検査では末梢血好酸球増多,総IgEの著明な上昇を認める.
▼定義
先行する気管支喘息の治療経過中に症状の悪化や粘稠な喀痰を伴う湿性咳嗽,肺野浸潤影,中枢性気管支拡張像を呈する.末梢血好酸球の増加,総IgE値高値を認め,茶褐色の粘液栓子の喀出の既往,喀痰からの真菌検出を認めた場合には本疾患を考える.
▼病態
気道内に存在する真菌によってⅠ型およびⅢ型アレルギー反応が引き起こされる疾患.
真菌の細胞壁の構成成分に対する免疫反応,真菌の含有する蛋白分解酵素による気道炎症の増悪,真菌由来のトキシンによる気道刺激などにより病態が形成される.
症状として微熱,喘鳴,咳嗽,喀痰を主症状とし,血痰を認めることもある.褐色ゼリー状の粘液栓子の喀出は本症を示唆する重要な症状である.また本疾患は再発を繰り返すケースもあり,比較的早期から中枢性の気管支拡張や肺の線維化などを認め,構造破壊の進行により呼吸不全に至ることもある.
▼疫学
気管支喘息全体におけるABPMの有病率は国際的には2.5~5%程度と推測されているが,患者背景やAspergillus fumigatus以外の原因真菌の割合なども国・地域においても頻度は異なると考えられる.発症に性差はなく,好発年齢は30~50歳代ともいわれているが,高齢者発症も少なくない.日本での横断的研究報告によれば,発症の平均年齢は57歳で女性に多く発症することが明らかになった.
▼分類
主な原因真菌としてAsper
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