診療支援
治療

2 悪性関節リウマチ
malignant rheumatoid arthritis
松本 功
(筑波大学准教授・膠原病リウマチアレルギー内科)

疾患を疑うポイント

●RAと診断されている患者で,皮膚,眼,肺,血管などに全身性の炎症を合併している.

●長期に疾患活動性がコントロールできていない症例に併発しやすい.

●血液検査ではリウマトイド因子高値や,血清低補体価または免疫複合体陽性を認める.

▼定義

 関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に,皮膚,眼,肺,血管などに関節外症状を併発し,難治性または重症な臨床病態を伴うものを悪性関節リウマチ(malignant rheumatoid arthritis)という.内臓障害のない,単に関節の疾患活動性が高い場合,あるいは関節の機能のみが高度に低下して身体障害がもたらされる場合は悪性関節リウマチとはいわない.

▼病態

 既存の関節リウマチによる多発関節炎に,全身型では発熱を伴って皮下結節,紫斑,筋痛,間質性肺炎,胸膜炎,多発単神経炎,消化管出血,上強膜炎などの症状がかなり急速に出現する.末梢型では皮膚潰瘍,梗塞,または四肢先端の壊疽を主症状とする.HLA抗原との関係では,関節リウマチはHLA-DR4との相関が指摘されているが,悪性関節リウマチではその相関がより強い.リウマトイド因子高値,血清補体価低値,免疫複合体高値を示し,IgGクラスのリウマトイド因子も高率に認められ,その免疫複合体が血管炎の起因に関与していると考えられている.

▼疫学

 年齢のピークは60歳代で,男女比は1:2.関節リウマチに比べると男性に多い.平成24年度の全国の患者数は6,255人で,関節リウマチの約1%に生じると考えられる.近年の関節リウマチ治療法の進歩により,欧米では有病率が低下しており,本邦でも減少傾向にあると考えられる.

▼分類

 悪性関節リウマチの血管炎は,全身性動脈炎型(各内臓を侵し,生命予後不良)と末梢動脈炎型(四肢末梢および皮膚を侵し,生命予後良好)の大きく2つの型に分けられる.

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