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治療

6 IPEX症候群など
immune dysregulation,polyendocrinopathy,enteropathy,X-linked(IPEX) syndrome
金兼 弘和
(東京医科歯科大学寄附講座教授・小児地域成育医療学)

▼定義

 免疫調節障害,多腺性内分泌症,腸症,X連鎖(immune dysregulation,polyendocrinopathy,enteropathy,X-linked:IPEX)症候群はFOXP3変異によって生じる.IPEX様症状を呈しながらFOXP3に変異がないものはIPEX様症候群とされる.

▼病態

‍ FOXP3は制御性T細胞(regulatory T cell:Treg)の発生や分化に重要な働きをしている.Tregは活性化すると自己免疫の抑制を行う.IPEX症候群ではTregの数的ないし機能的欠損を生じ,多腺性内分泌症をきたす.

‍ 難治性下痢症は90%以上の症例でみられ,多くは乳児期から発症する.内分泌疾患としては1型糖尿病が半数以上にみられ,ついで甲状腺機能低下症が多い.皮膚症状は70%程度にみられ,湿疹様病変が多い.血球系では自己免疫性の溶血性貧血,血小板減少,好中球減少が30%程度にみられる.糸球体腎炎,ネフローゼ症候群,間質性腎炎なども報告されている.

▼分類

 IPEX様症候群にはCD25欠損症,CTLA4ハプロ不全,STAT1機能獲得変異,STAT3機能獲得変異などがある.

▼診断

 免疫学的検査では血清IgA高値となり,IgE高値もしばしばみられる.合併症に応じて各種自己抗体が検出される.自己免疫性腸症合併例の多くに抗AIE-75抗体あるいは抗Villin抗体が検出され,特に前者は疾患特異性が高い.フローサイトメトリーによる制御性T細胞内のFOXP3蛋白の発現によるスクリーニングが有用であるが,確定診断はFOXP3遺伝子解析による.

▼治療

 内分泌疾患に対してはホルモン補充療法を行う.シクロスポリンやタクロリムスなどの免疫抑制薬が単独あるいは副腎皮質ステロイドとの併用で用いられる.唯一の根治療法は造血幹細胞移植である.

▼予後

 適切な治療が行われない場合に

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