疾患を疑うポイント
●臍帯脱落遅延に加え,新生児期の好中球数の極端な上昇や反復性細菌感染,膿瘍形成のない皮膚感染症,幼少期からの歯周囲炎(歯槽膿漏)が疑う手がかりとなる.
学びのポイント
●食細胞の粘着依存性機能異常が病因.
●LAD1では臍帯脱落遅延と膿瘍を形成しない感染症が,LAD2は上記症状に加え,まれな血液型〔Bombay(ボンベイ)型〕と精神発達遅延が,LAD3ではLAD1と同症状だが,低身長と血小板機能障害と出血傾向が認められるのが特徴である.
▼定義
食細胞の粘着能低下による易感染性を伴う疾患である.
▼病態
LADの基本病態は白血球のインテグリンファミリー(integrin family)かセレクチン(selectin)リガンドの粘着蛋白機能障害で白血球粘着異常または血管壁ローリング障害により,炎症局所に白血球の動員ができず,末梢血の白血球増多と膿瘍を形成できない感染症が惹起される.病型により,特殊な血液型や出血傾向,精神発達遅延を伴う場合がある.
▼疫学
LADの発生は,100万人に1人以下とされており,世界でLAD1が300例ほど,LAD2,LAD3については10例ほどである.日本ではLAD1症例が15例程度で,ほかの病型は報告されていない.
▼分類
以下の3つの遺伝子変異をきたした疾患が報告されている.①ITGB2遺伝子変異がありβ2 integrin subunit異常をきたし粘着不全をきたすLAD1,②SLC35C1変異があり,GDP-フコース輸送体異常によりセレクチン機能不全をきたし食細胞の血管内皮のローリング障害をきたすLAD2,③FERMT3変異があり,N-結合型グリコシル化異常によりインテグリン蛋白質へのシグナル障害をきたすLAD3が知られている.
▼診断
新生児からの極端な好中球増加と臍帯脱落遅延,膿瘍形成のない皮膚感染症,幼少期からの歯周囲炎(歯槽膿漏)
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