▼急性中毒治療の原則
急性中毒治療の原則を(表14-8図)に示す.中毒で第一に注意することは安全確保で,最初に避難と除染が必要かどうかを考える必要がある.適切な安全確保がなされていないと,中毒物質に曝露して救助者自らも急性中毒患者となってしまうためである.いわゆる二次災害である.
逆に,傷病者の周囲の人がすでに急性中毒に巻き込まれていることもありうる.例えばインターネットから得た情報を参考に,自宅の自室で石灰硫黄合剤(農薬)とトイレ洗浄剤(酸)を混ぜ合わせて硫化水素を発生させて自殺をはかった,という傷病者の場合,同居の家族,同じ建物の住人,近隣者,さらに救助者までもがすでに中毒患者になってしまっているかもしれない.診療においても気をつける必要がある.
原因となった危険物を除去することを除染という.拭き取り,器具などによって汚染対象物質を表面から取り除く,洗浄水を使用しない「乾式除染」,流水によって除染対象表面から対象物を除去する「水除染」がある.水除染ではさらに汚染された洗浄水の処理が必要となる.
▼気道管理
急性中毒の診療は,中毒治療=解毒剤投与ではない.生命維持に最も重要な,気道(airway)・呼吸(breathing)・循環(circulation)の評価と安定化をまずはかること(primary survey)が第一で,これは外傷を含むほかの救急傷病と同様である.このprimary surveyの延長上でけいれん対策や体温管理も行っていく.これらは生命維持のための対症療法といえる.ただし,急性中毒ではこれら対症療法と同時に,毒物の吸収阻害および排泄促進を行い,さらには原因物質に特異的な解毒薬,拮抗薬を投与することが特徴的である.
急性中毒ではしばしば意識レベル低下を伴う例がある(睡眠導入薬や抗てんかん薬の過量内服など).さらにそのような症例では,薬剤の排出促進,吸収阻
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