診療支援
治療

4 解毒薬,拮抗薬
antidote,antagonist
清田 和也
(さいたま赤十字病院・副院長)

学びのポイント

●解毒薬,拮抗薬の作用機序を知る.

●解毒薬,拮抗薬は特異的な働きである.

●適切な全身管理と合わせて解毒薬,拮抗薬を投与すれば,臨床症状および予後を改善する可能性がある.

▼定義

 解毒薬,拮抗薬とは,薬毒物または毒性代謝物の毒性を減弱させる薬物である.「解毒薬」のほうはより広い意味で毒性を緩和させる意味があり,活性炭やキレート剤をも含む.マムシ毒素に対する乾燥まむしウマ抗毒素血清などの抗血清もこれに含まれる.特定の中毒原因物質に対して,次に示すようなメカニズムを介して,その中毒作用を特異的に遮断する解毒薬を「拮抗薬」という.拮抗薬は特定の中毒物質に対しては特異的な解毒作用を示すが,それ以外の中毒物質に対しては効果が認められない.とはいえ,両者はあまり区別せず使用されることも多い.

▼分類

 そのメカニズムから大きく以下の5つに分類できる.

受容体で薬毒物を競合的に拮抗する薬物

1)ナロキソン

 モルヒネやヘロインなどのオピオイド類に対して拮抗する.米国では乱用薬物としてオピオイド類が広がっており,一次救命処置の教科書にもナロキソンの投与が記載されているほどである.わが国では癌性疼痛などで使用される医療用麻薬による中毒に対する拮抗薬として用いられることが多い.

2)アトロピン

 ムスカリン性のアセチルコリン受容体において,有機リンやカーバメート剤,神経毒ガスを競合的に拮抗する.したがって,これらの中毒症状のうち,縮瞳・徐脈・唾液気道分泌亢進などのムスカリン症状にのみ特異的に働く.線維束れん縮や呼吸筋を含む筋力低下については無効であることに注意する.

3)フルマゼニル

 ベンゾジアゼピン受容体においてベンゾジアゼピン受容体作動薬を競合的に阻害する.一般的なベンゾジアゼピン受容体作動薬の半減期よりフルマゼニルの半減期は圧倒的に短いため,診断的な意味での使用は可能であるが,いったん覚醒

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