診療支援
治療

区画症候群(コンパートメント症候群)
Compartment syndrome
多田 薫
(金沢大学 助教)

【疾患概念】

 四肢や体幹において骨や筋膜,骨間膜に囲まれたコンパートメント(区画)の内圧が上昇し,筋肉や神経などの組織の循環障害を生じた状態である.循環障害が発生すると2時間以内に筋肉の壊死が生じ,6~8時間が経過すると筋肉や神経に不可逆的な阻血性障害が生じるとされるため,早期の診断,治療が必須である.骨折や血管損傷などの外傷が原因となることが多く,好発部位は下腿や前腕であるが,手や足,大腿などにも発生する.本項では急性型のコンパートメント症候群について述べる.

【病態】

 コンパートメントの容積の減少(圧迫や牽引)あるいは,コンパートメントの内容の増加(出血や阻血後の再潅流)によって生じる.なお下腿には4つの,前腕には3つのコンパートメントが存在する(図2-12図2-13).


問診で聞くべきこと

 外傷を契機に発症することが多いため,受傷機転や受傷時期について聴取する.また,血友病や血管脆弱性をきたす疾患の既往歴,抗凝固薬や睡眠薬の服用歴についても聴取する.


診断のポイント

 動脈圧モニター装置やコンパートメント内圧測定装置を用いてコンパートメント内圧を測定することで確定診断できるとされているが,内圧の測定は偽陽性率が高い検査であり,臨床症状を優先して診断を行うのが原則である.一般的にコンパートメント内圧が30~40mmHg以上となった場合,または拡張期血圧とコンパートメント内圧との差が30mmHg以下となった場合は,筋膜切開術の適応とされる.内圧を測定する際は動脈圧モニター装置のラインに18G針をつけ生理食塩水で満たし,各コンパートメントに針を刺入して測定する方法が簡便である.内圧は測定部位によるばらつきがあるため,数か所で測定すべきである.

 症状としては有名な徴候である5P〔pain(疼痛),pallor(蒼白),paresthesia(知覚鈍麻),paralysis(麻

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?