診療支援
治療

乾癬性関節炎
Psoriatic arthritis
岸本 暢将
(杏林大学 准教授(腎臓・リウマチ膠原病内科))

【疾患概念】

 乾癬性関節炎(psoriatic arthritis;PsA)は,皮膚の乾癬に関節炎を合併した慢性炎症性疾患である.1818年にはその関連が指摘されていたが,1959年になって初めて,Wrightより関節リウマチ(RA)や変形性関節症と異なる疾患としてPsAという疾患概念が提唱された.その後WrightとMollらにより血清反応陰性脊椎関節症〔seronegative spondyloarthropathy.その後,脊椎関節炎(SpA)となる〕という疾患概念が提唱され,PsAはそのなかの1疾患として多くの類似する症候を有する.

【頻度】

 欧米では一般人口の2~3%に乾癬がみられ,最大で乾癬患者の約40%に関節炎を合併するといわれ,非常に頻度の高い疾患である.わが国の乾癬の頻度は欧米の10分の1であり,アジア諸国で乾癬患者の関節炎合併は約5%,わが国の報告では1%前後とされ,PsAはまれな疾患と考えられてきた.しかし,昨今では食生活の欧米化とともに,乾癬の有病率が上昇していると考えられ,最近の報告では乾癬患者中のPsAの有病率も約15%と上昇していた.PsA発症年齢の中央値は36歳とRAより若年発症で,男女比は海外では1:1であるが,わが国では2:1と男性に多い.

【臨床症状】

 PsAでは,関節炎の発症前に約70%の患者で皮膚の乾癬病変がみられるため,関節炎を呈した患者が整形外科外来に受診した際には,PsAの可能性を考え,手足爪を含めた乾癬の好発部位の視診を必ず行う.例えば,機械的刺激部位に皮疹が現れるケブネル現象により,肘や膝の伸側が乾癬の好発部位であるが,乾皮症や湿疹と間違われるケースもあるため,診察時は必ず袖とズボンをまくって視診を行う.その他,頭皮の乾癬では“ふけ”,耳内では“耳垢”と間違われるため,確認するようにしたい.鼡径部や陰部,殿裂部,臍周囲などはな

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