診療支援
治療

神経病性関節症(Charcot関節)
Neuropathic arthropathy (Charcot joint)
大野 久美子
(東京大学医科学研究所附属病院 助教(関節外科))

【疾患概念】

 神経病性関節症は,足や足関節の破壊を伴った進行性変性を特徴とした関節炎として,神経病理医のCharcotが1868年に報告した.本症は末梢神経障害の合併症の1つで,骨や関節の増殖性変化と破壊が混在した,著明な関節変形をきたす疾患である.原因疾患として,糖尿病が最も多く,ほかには脳血管障害,Hansen病,脊髄疾患,Parkinson病,HIV,サルコイドーシス,リウマチ性疾患,毒性物質曝露が挙げられる.病因は不明な点もあるが,現在考えられているのは,神経外傷性説や神経血管作動性説,さらに両者を合わせた説である.感覚障害があることで外傷に対する防御機構の低下や,さらに局所の血流上昇と虚血により,炎症性サイトカインであるTNF-α(tumor necrosis factor-α)などが上昇することでRANK(receptor activator of nuclear factor-κ/B)ligand(RANKL)系が活性化し,破骨細胞活性化,骨代謝が亢進し,骨破壊が進行すると考えられている.

【頻度】

 Charcot関節は明確な診断基準がなく,原因疾患ごとの正確な発生頻度は不明であるが,糖尿病患者の0.1~7.5%に起こり,さらに末梢神経障害のある糖尿病患者の35%に発症するとされる.一方,Charcot関節の40%は,特発性末梢神経障害により起こるという報告もある.

【臨床症状と病態】

 感覚障害のため自覚症状が乏しく,強い関節変形にもかかわらず痛みが少ないことは本症の特徴である.初期症状である足部腫脹と発赤は見逃されやすく,発症時期を特定することは難しい.関節症の他覚所見として,関節腫脹,関節液貯留,熱感,骨棘形成,増殖性変化とともに骨の破壊変形がみられる.さまざまな関節が神経病性関節症として侵され,特に糖尿病性関節症は足関節や足部,脊髄癆性関節症では膝関節が罹患

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