この項では筋・神経疾患の臨床診断の原則と実際のポイントを概説し,整形外科疾患と特に間違われやすい神経・筋疾患についても簡単に記述する.
1.問診と神経学的診察のポイント
【1】神経学的診察は患者が診察室に入ってくるときから始まる
患者が診察室に入ってくるときの様子をしっかり観察すると,多くの情報が得られる.表情はどうか,動作は機敏か緩慢か,歩き方はどうかなどを見る.経験を積むと,パーキンソン症候群は入室して椅子に座るまでの間にほとんど診断をつけることが可能である.また衣服を脱ぐ動作の観察も重要である.ボタンをはずす動作がうまくできるかを見れば,手指の筋力低下や巧緻運動障害がわかる.シャツを脱ぐときに肩が上がるかどうかで,上肢近位部の筋力低下がわかる.詐病やヒステリーにおいては,そのような動作と筋力テストとの間に乖離がみられる.
【2】病歴聴取中も話を聞きながら観察を続ける
最初の3分程度は患者