【疾患概念】
静脈弁の機能不全や血栓などにより静脈圧が高まり静脈が拡張した状態をいう.生命および下肢の予後は良好であるが,外見および付随症状によってQOLが著しく低下しかねない疾患である.
【頻度】
一般成人において5~30%.
【臨床症状】
①皮膚の外見変化:種々の静脈拡張,色素沈着,うっ滞性潰瘍,血栓性静脈炎.
②うっ滞による症状:浮腫,だるさ,筋痙攣(こむら返り).
問診で聞くべきこと
外見変化に先行する症状があったかを聞く.
必要な検査とその所見
種々の理学検査や画像検査があるなかで血管エコーが簡便かつ低侵襲であり,治療方針を立てやすい.静脈逆流の確認および併存する深部静脈血栓の有無を確認する.
鑑別診断で想起すべき疾患
浮腫をきたす全身性疾患,潰瘍をきたす虚血や腫瘍.
診断のポイント
治療方針にかかわるため一次性か二次性かの区別が重要となる.弁不全など静脈そのものに起因するものを一次性静脈瘤とよび,血栓・妊娠・腫瘍などの静脈還流障害に起因するものを二次性静脈瘤とよぶ.
専門病院へのコンサルテーション
二次性の場合は血管外科もしくは循環器内科と相談し,血栓などに対する治療が必要になる.そのほかは整形外科治療後でも可能である.
治療方針
内服による薬物療法はないが,まずは保存療法からはじめ手術療法に移行する.
保存療法
うっ滞を予防する圧迫療法(弾性ストッキング着用など)や下肢挙上などの理学療法が中心となる.症状の改善や外見の増悪の予防が目的であり,理学療法で外見的に治癒することはまれである.
手術療法
伏在静脈の本幹を治療する方法としては高位結紮・ストリッピング(抜去)術もあるが,昨今はレーザーもしくはラジオ波による血管内焼灼術が主流となっている.また側枝を治療する方法としては静脈抜去や硬化療法がある.
合併症と予後
一次性は基本的には予後良好である.
患者説明のポイント
静脈瘤自体は生命
関連リンク
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/下肢静脈瘤,深部静脈血栓症
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/下腿潰瘍
- 臨床検査データブック 2023-2024/静脈瘤,静脈血栓症(血栓性静脈炎),深部静脈血栓症(DVT)
- 今日の救急治療指針 第2版/深部静脈血栓症
- 新臨床内科学 第10版/2 解離性脳動脈瘤
- 新臨床内科学 第10版/3 表在性血栓性静脈炎
- 新臨床内科学 第10版/4 下肢静脈瘤
- 今日の整形外科治療指針 第8版/急性動脈閉塞
- 今日の整形外科治療指針 第8版/静脈血栓塞栓症
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