診療支援
治療

静脈血栓塞栓症
Venous thromboembolism (VTE)
山本 晃太
(宮内庁皇嗣職 侍医)

【疾患概念】

 Virchowが提示した内皮障害・凝固亢進・血流うっ滞を成因として,体幹もしくは四肢の深筋膜より深くに存在する深部静脈に生じた血栓を深部静脈血栓症(DVT)という.その血栓が遊離し,肺動脈を塞栓することによって,肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism;PTE)が生じる.DVTとPTEは一連の病態であり,これら2つを合わせた概念を静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism;VTE)とよぶ.本項では整形外科医が遭遇しやすい下肢を中心とした急性DVTについて述べる.

【頻度】

 DVTの頻度は0.1~4.6%とされており,欧米に多いとされていたもののわが国でも増加傾向にある.また検査の感度の向上により,無症状のものも多く認められるようになっている.

【臨床症状または病態】

 大部分が骨盤を含めた下肢に発生するため下肢症状が多く,また腸骨動静脈の解剖学的特徴から左側が多くなっている.膝関節を境界にして中枢型と末梢型に分類され,中枢型のほうが腫脹・疼痛・色調変化などの局所症状をきたしやすい.また中枢型のほうが後述する合併症も併発しやすいため治療の適応となりやすい.静脈の高度還流障害により動脈還流障害が生じて局所が重症化すると,有痛性白股腫・有痛性青股腫・静脈性壊死をきたすこともある.


問診で聞くべきこと

 DVTや活動性のがんの既往などを聞き,リスク評価(Wellsスコアなど)を行うが,整形外科領域の下肢手術は中等度以上のリスクになっているものが多い.


必要な検査とその所見

 血液検査にてまずDダイマーを測定する.基準値以内であれば急性期の血栓はないとみなされ除外できるが,高値であれば画像診断を行う.一般的にはまず低侵襲の超音波検査を行い,中枢型血栓が存在すれば全身の造影CTを行って血栓の全体的評価とともに肺動脈内血栓の有無を確認する.なお,

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