【概説】
圧迫性頚髄症は静的圧迫因子,動的圧迫因子,循環因子などの複数の因子が関連して発症するとされているが,その病態は完全には解明されていない.圧迫性頚髄症の診断では臨床症状,神経学的所見から高位診断を行い,MRIなどの画像による脊髄圧迫レベルと障害高位が一致するかを確認することが重要である.臨床所見と画像所見の不一致がある場合は,神経内科疾患などの鑑別疾患を念頭に置いて,鑑別診断を行う必要がある.
1.病態
圧迫性脊髄症の発症には,主として①静的因子,②動的因子,③脊柱管狭窄因子,④循環因子の4つの因子が関与するとされている.しかし,4つの因子がどのように関連して脊髄症を発症するのか,またどのような機序で脊髄に選択的な病変を生じるのか,いまだ完全に明らかになっていない.主な慢性脊髄圧迫障害の原因疾患としては,頚椎症性脊髄症,後縦靱帯骨化症,黄色靱帯骨化症,脊髄腫瘍などがある.
脊髄症の症状は髄節徴候(segmental sign)と索路徴候(long tract sign)に分けて考えると理解しやすい.髄節徴候は障害レベルの灰白質の異常により生じ,支配高位の筋の筋力低下,筋萎縮,腱反射低下といった弛緩性麻痺をきたす.また,索路徴候は障害高位の白質の障害により生じ,障害レベルから尾側の痙性麻痺を生じる.
2.診断の実際
頚部脊髄症の診断は主として臨床所見と画像所見により行う.必要に応じて,電気生理学的検査も補助診断として使用される.重要なことは,臨床所見による神経学的障害レベルと画像所見による神経圧迫レベルが合致しているかを確認することである.
【1】問診・理学所見
問診上のポイントとしては,①初発症状(通常は手指のしびれ,歩行障害)の出現時期・罹病期間,②外傷歴の有無,③頚椎の動きとの関連,④ADL動作の障害の程度,⑤職業や治療歴などについて聞く.
理学所見は,視診から神経診
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