1.背痛・胸郭痛のとらえ方
整形外科を訪れる患者の訴えとして「背痛・胸郭痛」は比較的多い.その原因として,加齢により生じる変性や外傷など胸郭構造の異常が最も頻度が高く,感染や腫瘍なども原因となる.しかし表20-1図に示すように,心血管,呼吸器,消化器など筋骨格系以外の多岐に及ぶ臓器,器官が疼痛の原因となる可能性があり,その診断には整形外科的診察のみならず,内科的,精神科的診察も含めた総合的なアプローチが必要となることも少なくない.
また背痛・胸郭痛の原因となる疾患のなかには下肢症状として初発し,原病巣部位の疼痛出現とともに急速に症状が進行し,診断および治療が遅れると重篤な機能障害に至ってしまう場合がある.そのため症状の重症度,緊急度についても適切に判断し対応していく必要がある.
2.診断手順
背痛・胸郭痛を訴える患者であっても,基本的にはほかの疾患の診察法と大きく異なるところはなく,一般的な順序に従って診察を行い,必要に応じ各種画像検査や血液検査などの補助診断を行うことで正確な診断を心がける.
【1】問診
背痛・胸郭痛の発症様式,経過,体位や動作との関係,付随する脱力や感覚障害の有無について手際よく聴取する.悪性腫瘍や内科的疾患などを含めた既往歴や家族歴,職業歴,趣味,スポーツおよび家庭環境についても詳細に聴取する.その際,高齢者における脆弱性骨折や脊椎転移など,年代別に頻度の高い原因疾患を想定しながら必要な情報を聴取することで,不必要な検査を避けた早期診断が可能となる.
疼痛の性質については「ズキズキする」,「締め付けられる」といった具体的な表現を聴取し,疼痛の強さについてはvisual analog scale(VAS)やnumerical rating scale(NRS)を用いることで客観的な表現が可能となり,また経時的な変化も捉えやすい.
【2】理学所見
診察室に入る患
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