診療支援
治療

仙骨部腫瘍
Sacral tumors
尾﨑 敏文
(岡山大学大学院 教授)

【疾患概念】

 仙骨部に発生した骨腫瘍と軟部腫瘍全体のことであるが,ここでは仙骨骨腫瘍を中心に記載する.日本整形外科学会骨軟部腫瘍委員会 全国骨腫瘍登録一覧表(2006~2017年)に登録された仙骨骨腫瘍症例は,良性腫瘍207例,原発性悪性腫瘍475例,続発性悪性腫瘍309例,骨腫瘍類似疾患52例であった.良性腫瘍207例の内訳は,骨巨細胞腫79例,血管腫52例,神経鞘腫34例,骨軟骨腫10例,その他32例であった.一方,原発性悪性腫瘍475例の内訳は,脊索腫303例,骨肉腫36例,悪性リンパ腫40例,Ewing肉腫27例,その他69例と続く.仙骨悪性腫瘍では約2/3が脊索腫である.骨腫瘍類似疾患52例のうち,単発性骨嚢腫19例と線維性骨異形成14例が多い.

【臨床症状】

 まず仙骨部や殿部の疼痛を訴えることが多い.さらに膀胱直腸障害や,下肢のしびれや麻痺など神経症状を呈することがある.症状は腰椎疾患と類似するために,腰椎疾患との鑑別が重要である.仙骨部に腫瘤を触れることもある.良性腫瘍では骨巨細胞腫を除き,進行が緩徐な傾向である.


問診で聞くべきこと

 いつからどの部分が痛くなったか,痺れたか,腫瘤が出現したかを聞く.転倒による打撲など外傷と関係がないかなども重要である.がんの骨転移の可能性もあるため,がんの既往歴の聴取は大変重要である.


必要な検査とその所見

 まず衣類を脱いでいただき,仙骨部をよく診察することが基本である.仙骨部に腫瘤を触知したり圧痛を訴えることもある.

 腰椎疾患が考えられやすいので,まずは腰椎単純X線が撮影されることが多い.仙骨を含む骨盤単純X線写真があれば診断が可能なことがある.しかし,単純X線写真では腫瘍像は検出しにくいことが多いので,症状が続くならCTやMRI(図21-17)を追加で検討する.その場合も腰椎をターゲットに撮像することが多いと思われるが,腰椎

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