診療支援
診断

黄疸
Jaundice
日浅 陽一
(愛媛大学大学院教授・消化器・内分泌・代謝内科学)

診断のチェックポイント

定義

❶黄疸とは:血中ビリルビンの増加により,皮膚,結膜,粘膜,その他の組織へビリルビンが沈着し,組織が黄染した状態である。血中ビリルビンには非抱合型(間接)と抱合型(直接)の2種類があり,黄疸がみられた際には,まず血液検査にて間接ビリルビンと直接ビリルビンのどちらが優位に上昇しているかを把握する必要がある。上昇するビリルビンのパターンにより病態が大きく異なる(図1)。

❷間接ビリルビンが高い場合:ビリルビン産生増加(溶血性疾患,赤血球産生異常,新生児黄疸など),肝のビリルビン取り込み障害(心不全,敗血症,薬物,飢餓など),グルクロン酸抱合の障害(Gilbert症候群,Crigler-Najjar症候群,新生児,甲状腺機能亢進)などを想定する。

❸直接ビリルビンが高い場合:ビリルビンの排泄障害(Rotor症候群,Dubin-Johnson症候群),肝細胞障害(急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変),胆管障害(胆石および胆管癌などによる胆管閉塞,胆囊炎および化膿性胆管炎,原発性胆汁性胆管炎,原発性硬化性胆管炎,薬物など)を想定する。

❹背景疾患:肝逸脱酵素と胆道系酵素を測定し,どちらが優位に高値かによって,肝細胞障害型か,胆汁うっ滞型か鑑別を行い,背景疾患を推定する。

【1】病歴

❶家族歴:体質性黄疸,溶血性貧血などの遺伝性の疾患の拾い上げに役立つ。

❷アルコール摂取歴,薬物服薬歴,海外渡航歴,生魚介類・生肉摂食歴,不特定者との性行為歴,違法薬物使用歴,輸血歴:急性肝障害の鑑別に役立つ。薬物性肝障害は処方薬のみならず,市販薬,サプリメント,漢方,毛染めなどでも起こりうるため,詳細な病歴聴取が必要である。

❸尿,便の色調変化:発症時期の推察のみならず,鑑別に役立つ。非抱合型ビリルビンはアルブミンと結合するため,糸球体を通過せず尿中に検出されない。一方,抱合型ビリルビンは親水性が

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