診療支援
診断

脳脊髄液減少症
Cerebrospinal Fluid Hypovolemia
大本 周作
(東京慈恵会医科大学講師・神経内科)

診断のチェックポイント

定義

脳脊髄液の硬膜外への漏出により脳脊髄液量が減少し,起立性頭痛をはじめとする多彩な症状を呈する疾患。「国際頭痛分類 第3版」(ICHD-3)では“低髄圧による頭痛〔headache attributed to low cerebrospinal fluid (CSF) pressure〕”に分類され,さらに3項目に細分化されている(表1)。ICHD-3による診断基準を表2に示す。

❷脳脊髄液漏出の原因となる手技もしくは外傷後では脳脊髄液瘻性頭痛,原因が明らかでない場合は特発性低頭蓋内圧性頭痛に分類される。

【1】病歴

❶頭痛の特徴:突然,または緩徐に発症する起立時の頭痛が特徴的である。雷鳴頭痛での発症の報告もある。頭部の動き,いきみやくしゃみ,高所などにより増強し,鎮痛薬の効果は乏しい。

❷頭痛以外の症状:約半数に嘔気・嘔吐,頸部痛,項部硬直を伴う。その他,聴覚前庭症状や視覚症状など多彩な症状を呈しうる(表3)。

❸誘因となった出来事はないか:転倒(尻もち),くしゃみ,スポーツ,性行為,頭頸部の軽微な外傷など。

❹硬膜穿刺後や髄液シャント術後ではないか:後者ではオーバードレナージが本症の原因となる。

【2】身体所見

❶起立性頭痛:頭痛は立位または坐位で生じ(通常は2時間以内,ほとんどの症例は15分以内),臥位で軽快する。経過中に慢性的な頭痛に変化することもある。まれに頭痛が臥位で増悪し立位で改善する症例もある。

❷随伴症状:嘔気・嘔吐,頸部痛,項部硬直などのほか,頻度は少ないが脳脊髄液減少に伴う脳・脊髄など各部位の圧排や進展により,複視や顔面麻痺などの脳神経症状や小脳性運動失調などの局所神経徴候を呈することがある。脳の下垂(brain sagging)が強くなると,脳ヘルニアが起こり意識障害をきたす(表3)。

❸頸静脈の圧迫やValsalva負荷による頭痛の

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