診療支援
診断

脳波所見の臨床的意義
Clinical Significance of Electroencephalographic Findings
神 一敬
(東北大学大学院准教授・てんかん学分野)

正常脳波所見

【1】脳波検査とは:脳神経細胞の電気活動の経時的変化を記録する検査で,縦軸が2つの電極間の電位差(μV),横軸が時間(秒)で示されている。正常でも覚醒時と睡眠時で全く異なる所見を呈する。

【2】覚醒時と睡眠時の正常脳波

❶覚醒時には瞬目・筋電図によるアーチファクト(雑音),後頭部優位のアルファ帯域の基礎律動を認める(図1)。

❷睡眠時の所見は睡眠段階により異なり,特徴的な波形がみられる。特に軽睡眠時にみられる頭蓋頂一過性鋭波〔vertex sharp transients of sleep,以前は瘤波(hump)とよばれることが多かった〕は,その鋭い波形からしばしばてんかん性異常と誤って判読されるので注意が必要である(図2)。

検査の適応

【1】てんかん診断

❶何らかの発作性エピソードがあり,てんかんを疑う場合に行う。

❷てんかん性脳波異常の有無およびその分布がわかる。

【2】脳機能評価

❶意識障害を疑う場合に行う。

❷原因診断に特異的な異常が得られることは少ないが,脳機能障害の程度およびその分布がわかる。

てんかん診断

【1】てんかん診断における脳波検査の有用性と「限界」

❶脳波検査がてんかん()の診断において最も有用な検査であることはいうまでもないが,実際にはその「限界」をよく理解したうえで診療にあたる必要がある。

❷通常の外来・入院精査で行われるルーチン脳波検査,神経救急で行われるポータブル脳波検査は30分~1時間ほどの短時間記録である。1,766人の成人患者を対象にしたシステマティック・レビューの結果によると,てんかん患者の約半数は初回脳波が正常であると報告されている。脳波の検査回数を重ねるほど,脳波の記録時間を長くするほど,てんかん性脳波異常の記録される割合が増えるとの報告はあるが,どれだけ正常脳波を繰り返し確認したとしてもてんかんを完全に除外することはできない。

❸てんかん

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