診療支援
診断

口腔・舌の異常
Abnormal Findings of the Oral Cavity and the Tongue
余田 敬子
(東京女子医科大学東医療センター耳鼻咽喉科・准教授)

緊急処置

【1】口腔アレルギー症候群

❶新鮮な果物や野菜を摂取した直後から数分以内に口唇,舌,口腔内,咽頭にピリピリ感,かゆみなどが誘発される。

❷多くは自然消退するが,時に嘔吐などの消化器症状やアナフィラキシーショックなど重篤な全身症状を呈する場合がある。

❸迅速に呼吸や意識状態を確認し,状況に応じてアドレナリン筋注,気道確保を行う。

【2】口腔・舌の外傷などに伴う多量出血:気道閉塞の可能性がある。傷の深さや出血量に応じて迅速に止血処置を行う。

診断のチェックポイント

定義

❶口腔・舌の異常は,器質的異常(表1)と機能的異常(表2)に分けられる。

❷口腔・舌の器質的異常のうち炎症性病変が主体のものを「口内炎」といい,特に病変が舌,歯肉,口角,口唇に限局する場合は,それぞれ舌炎,歯肉炎,口角炎,口唇炎という。

【1】病歴

❶発症は突発的か緩徐か:突発的に発症〔→急性炎症性疾患(表3)〕,発症も進行も緩徐で2週間以上持続する〔→慢性炎症性疾患(表4)〕。

❷症状は進行性か,持続性か,間欠性か:難治性,再発性の場合,症例数は少ないが適切な対応が遅れると予後に影響する疾患を考慮する(→尋常性天疱瘡・粘膜類天疱瘡,Behçet病,Crohn病,扁平苔癬,梅毒・結核,悪性疾患など)

❸外傷や誘因物質との接触の有無(→外傷性,接触性口内炎)。

❹服薬歴,合併症の有無(→薬剤性,全身疾患性)。

【2】身体所見

❶疼痛の有無:有痛性(→炎症性疾患,舌痛症)。無痛性(→腫瘍,先天性,その他の疾患)。

❷口内炎+目のかすみ・充血,下痢・腹痛・下血,陰部痛・排尿痛,関節痛,皮疹,発熱あり(→Behçet病,Crohn病)。

❸口内炎+皮膚の弛緩性水疱・びらん,咽喉頭・鼻・結膜・腟・肛門・膀胱・尿道の有痛性のびらん(→尋常性天疱瘡)。

❹口内炎+眼粘膜の水疱・びらん(→粘膜類天疱瘡)。

【3】検査

❶血液検査:血算(→血液疾患

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