診療支援
診断

不随意運動
Involuntary Movements
織茂 智之
(関東中央病院・脳神経内科統括部長)

緊急処置

【1】不随意運動を有する患者においては,一般的には緊急処置を要する患者は少ないが,意識障害や呼吸・循環動態の変動を伴う患者に不随意運動が起こることもある。その際はまず意識・呼吸・循環動態を評価し,呼吸・循環動態の確保に努め,原因検索そしてその原因に対する治療を行う。

【2】不随意運動が激しい場合には,自他ともに外傷を負わないように注意する必要がある。

診断のチェックポイント

定義:不随意運動とは,身体の一部あるいは全身に自らの意思に関係なく起こり,通常抑制することができないか,部分的にしか抑制できない運動をいう。一般的には,筋けいれん,線維束性収縮,ミオキミアなどは不随意運動には含まない。

【1】病歴

❶発症年齢・様式:発症年齢はいつか。発症様式は急性,亜急性,慢性か。

❷増悪・緩解因子:特定の肢位,光,音,痛み,精神的緊張で増悪するか。飲酒で軽快するか。感覚トリック(特定の感覚刺激によりジストニアが軽快すること)はあるか。睡眠時に消失するか(口蓋振戦や睡眠時ジスキネジアなどの例外はあるが,ほとんどの不随意運動は睡眠時に消失する)。

❸既往歴・併存症:肝不全,腎不全,糖尿病や脳血管障害や頭部外傷後などに不随意運動が起こることがある。

❹服薬歴:薬剤性の不随意運動は多い。抗精神病薬,抗てんかん薬,抗Parkinson病薬,胃腸薬,気管支拡張薬,交感神経刺激薬,抗不整脈薬,ホルモン製剤などで不随意運動をきたしうる。

❺職業歴:職業性ジストニアとは,職業に関連するジストニアである。音楽家が楽器を演奏できなくなったり,歌手が発声時頸部ジストニアで歌えなくなったりする。溶接工などではマンガン中毒による不随意運動などもみられる。

❻家族歴:遺伝性疾患として,家族性Parkinson病,Huntington病,歯状核赤核ルイ体萎縮症,有棘赤血球舞踏病,球脊髄性筋萎縮症,Wilson病,遺伝性ジスト

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