診療支援
診断

動悸
Palpitation
村川 裕二
(帝京大学医学部附属溝口病院第四内科学講座・教授)

緊急処置

【1】血圧低下やめまいなどを伴う動悸は頻脈性不整脈を疑わせる。すぐに心電図検査を行う。抗不整脈薬や直流通電を考慮した緊急態勢を要する。

【2】血行動態が安定している動悸,心拍数上昇が著しくない動悸は背景疾患の検査を優先し,調律への緊急処置は要さない。

診断のチェックポイント

定義:動悸は「心臓の拍動を自覚する症候」である。身体活動に相応する心拍数を超えていることが多いが,生理的に正常の心拍数,あるいは徐脈のときに動悸を訴えることがある。不整脈による動悸と不整脈性を背景としない動悸がある(表1)。

【1】病歴

❶心不全,高血圧,貧血,甲状腺機能など関係する背景疾患の有無。

❷動悸の性状:頻度,持続時間,好発時間,誘因など。

❸薬物治療,心理状態,生活との関連。

【2】身体所見

❶心拍の性状:心拍数,規則性。

❷血行動態:血圧,冷汗・めまいを伴うか。

❸胸部所見:心雑音,肺うっ血,呼吸器疾患を示唆する肺音異常。

❹全身徴候:貧血,眼球突出,振戦,浮腫など原因を示唆する所見。

❺意識レベルや精神症状:ストレスや不安,精神科疾患を疑わせる徴候。

【3】検査

❶生理検査:12誘導心電図。必要に応じ,Holter心電図・イベントレコーダ・運動負荷試験・心エコー。

❷採血検査:貧血,炎症反応,BNP,甲状腺機能,内分泌代謝系。

❸画像検査:胸部X線,CT。

❹特殊な検査:電気生理学的検査など。

原因疾患と頻度

【1】不整脈:頻脈性不整脈や期外収縮が多い。心房期外収縮,心室期外収縮,発作性心房細動,発作性上室頻拍。正確な頻度を知ることは難しい。

【2】不整脈性以外の心血管疾患:心不全は呼吸苦を訴えることが多い。動悸が主訴であることは少ない。

【3】非心臓疾患:貧血,甲状腺機能亢進症は比較的多い。慢性の呼吸器疾患は進行が緩徐のことが多く,動悸の訴えは少ない。気管支喘息,精神科疾患,循環器の治療薬には動悸を副作用とするものも

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