診療支援
診断

門脈圧亢進症
Portal Hypertension
坂井田 功
(山口大学大学院教授・消化器内科学)

緊急処置

【1】食道胃静脈瘤出血:出血性ショックからの回復を目的に輸血や輸液を行い,血圧を安定させ,緊急内視鏡検査による止血処置を行う。食道静脈瘤出血には内視鏡的静脈瘤結紮術を,胃静脈瘤出血にはHistoacryl®を用いた内視鏡的硬化療法を行う。内視鏡的に止血困難な例ではSengstaken-Blakemore tube(SB-tube)の使用を検討する。

【2】肝性脳症による意識障害:ラクツロースと微温湯を用いた浣腸(保険適用外)による腸管洗浄や分岐鎖アミノ酸製剤の点滴により意識の回復をはかる。

【3】門脈血栓症:急速に血栓が形成され,門脈本幹が閉塞した場合は,ショック,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC),肝不全などを生じる。ヘパリンおよびその類似物質,ワルファリン,アンチトロンビンⅢ製剤を用いた抗凝固療法を主に行う。

診断のチェックポイント

定義

❶門脈圧亢進症とは:常に門脈圧が200mmH2O以上に亢進した状態(正常値は100~150mmH2O)と定義される。門脈系からの流出血管抵抗の増大による流出障害と,門脈系への流入血液量の増加が関与する。

❷臨床所見:脾腫,腹水,腹壁静脈怒張,食道胃静脈瘤,肝性脳症,肝腫大,黄疸,貧血などがみられる。

【1】病歴

❶消化管出血(吐血・下血):門脈圧の上昇に伴い,食道胃静脈瘤が形成され,出血を起こす。門脈圧亢進症性胃症,十二指腸,直腸,肛門などの異所性静脈瘤からの出血もみられる。

❷肝性脳症:門脈-大循環短絡に起因するアミノ酸やアンモニア代謝異常により,慢性再発性肝性脳症がみられる。羽ばたき振戦,失見当識,意識障害,肝性口臭などの症状を呈する。

❸貧血・出血傾向:脾腫・脾機能亢進症による汎血球減少症を合併し,血小板減少による鼻出血などの出血傾向,貧血,白血球減少がみられる。

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