診断のチェックポイント
●定義(表1図):一般的に多尿は1日尿量が3,000mL以上もしくは40mL/kg以上とされている。排尿のため夜間覚醒することを夜間尿とよび,また眠りについてから朝起床するまでの尿量が1日尿量の35%以上となることを夜間多尿という。尿の回数が増えることを頻尿とよび,一般的に日中8回以上,夜間に2回以上である。
【1】病歴
❶発症形式:成人の尿崩症は突然発症のことが多く,腎性尿崩症や多飲症は緩徐に発症することが多い。
❷排尿回数・尿量
■前立腺肥大や膀胱機能障害では排尿回数は多いが尿の総量は多くない(少量頻回)。
■夜間に1回以上排尿する人は50歳台で約50%,80歳台では約90%である。
❸頭部手術歴・外傷歴:中枢性尿崩症は抗利尿ホルモン(ADH)産生が低下する病態であり,多くは特発性であるが,外傷,下垂体手術,低酸素脳症,トルコ鞍内腫瘍などが原因となる。
❹糖尿病の有無:高血糖により浸透圧物質であるブドウ糖が尿細管に到達するためにナトリウム,カリウムの吸収障害が起こり,多尿となる。
❺頭痛や視力障害:頭蓋内病変を示唆し,中枢性尿崩症が推測される。
❻家族歴:腎性尿崩症は遺伝性と後天性がある。
❼内服歴:高カルシウム血症の原因として,ビタミンDやカルシウム製剤が,腎性尿崩症や尿量増加の原因として,リチウム製剤,SGLT2阻害薬,利尿薬がある。
❽口渇の有無
■糖尿病:高血糖により血漿浸透圧が上昇するため口渇が著明となる。その他のマンニトールやグリセロールなどでも同様に血漿浸透圧が上昇し口渇が起こる。
■尿崩症:高ナトリウム傾向となるため血漿浸透圧が上昇し飲水行動が起こり多尿となる。
■Sjögren症候群:唾液分泌低下による口渇と間質性腎炎で多尿となる。
❾不眠:尿崩症の場合,夜間も多尿だが,心因性多飲症は夜間多尿がないことが多い。
【2】身体所見
❶体液量の評価
■血圧
・胸部:呼吸数,