診療支援
診断

高血圧緊急症
Hypertensive Crisis
本間 康一郎
(慶應義塾大学専任講師・救急医学教室)

診断のポイント

【1】血圧が異常に高いだけの状態ではない。

【2】血圧の上昇(多くは180/120mmHg以上)により,脳,心,腎,大血管などの標的臓器に急性の障害が生じる病態である。

【3】評価に時間を費やして治療が遅れてはならない。

【4】関連する臓器別専門医のいる施設に治療を依頼する。

緊急対応の判断基準

【1】すべてに緊急対応が必要で入院が原則である。集中治療室かそれに準じる環境下で,経静脈的に降圧を行う。

【2】血圧が異常に高いが臓器障害を認めないものは高血圧切迫症として扱う。高血圧切迫症においては,緊急降圧による予後改善のエビデンスはなく,緊急降圧の対象ではない。

【3】一方で,高血圧脳症,大動脈解離および子癇などでは,血圧が異常高値でなくても緊急降圧の対象となる。

症候の診かた

【1】高血圧:多くは180/120mmHg以上である。

【2】視力障害の有無を確認する。

【3】中枢神経症状(意識障害,麻痺,けいれん,頭痛,悪心・嘔吐など)の有無を評価する。

【4】心血管症状(胸背部痛および疼痛部位の移動,呼吸困難,血圧の左右差など)を確認する。

【5】最近の浮腫や体重の変化を確認する。

検査所見とその読みかた

【1】中枢神経症状がある場合:頭部CTを施行し,脳出血,くも膜下出血などの有無を確認する。急性期脳梗塞は頭部CTでの評価が困難なためMRIの施行が望ましい。高血圧性脳症では,MRIにおいて頭頂部から後頭葉の白質に血管性の浮腫所見が認められることが多い。

【2】心血管症状がある場合:心電図,胸部X線検査を施行し,すぐに結果が得られるのであれば採血で心筋マーカーやBNPを確認することで,急性冠症候群や心不全の有無を評価する。血圧の左右差や疼痛部位の移動があれば急性大動脈解離を疑い,採血検査でDダイマー,心臓,大動脈のエコー検査を行うが,致死的疾患のため,いたずらに時間を費やさずに胸腹部ダイナミッ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?