診療支援
診断

慢性硬膜下血腫
††
Chronic Subdural Hematoma
森岡 基浩
(久留米大学主任教授・脳神経外科)

診断のポイント

【1】60歳以上の高齢男性。

【2】1~2か月前の軽微な頭部外傷の既往(外傷が明確でない症例も多い)。

【3】数日で進行する頭痛と認知症症状,または脳卒中様症状(麻痺,構語障害,歩行障害,失語など)。

【4】頭部CTでは高吸収(high density)域を示すとは限らず,脳への圧排所見で判断する。

【5】抗血栓薬服用,肝機能障害(凝固系機能低下)のある患者。

緊急対応の判断基準

 症状が出現している場合は基本的に局所麻酔の手術が必要であるため,脳神経外科手術施設のある医療機関へ紹介搬送する

症候の診かた

【1】認知症症状:典型的な頭蓋内圧亢進症状(頭痛/嘔吐)を呈する例が多いが,認知症症状が主体となった例では頭蓋内圧亢進症状の訴えが明確でないことがある。認知症症状は比較的短期間(数日~1週間程)で進行する。

【2】反応性の低下:精神活動が低下することが多いため反応性の低下した認知症症状,失禁,歩行障害(麻痺も関与)などがみられるが,興奮性の認知症症状はみられない。

【3】脳卒中様症状:頭蓋内圧亢進症状のみでなく血腫の圧迫による脳の局所症状を伴うため,麻痺,失語,構語障害など脳卒中様の症状を伴うが通常の脳卒中と異なり数日の経過で症状が顕在化する。

検査所見とその読みかた

【1】腰椎穿刺は行うべきではなくCT・MRIをまず行う。

【2】血液検査:異常を示さない例も多いが,肝機能障害患者では凝固系機能低下を伴うことが多い。

【3】頭部CT(図1):テント上の硬膜下に三日月状の等・低あるいは高吸収域を認める。等吸収域を呈する例,両側性のものは診断が難しいが脳室の偏位,脳溝の消失・偏位(頭蓋骨内板から離れる)などから診断する。

【4】MRI(図1):一般にT1強調画像では高信号域,T2強調画像でも高信号域を示す。MRIのほうがCTよりも診断が容易である。

確定診断の決め手

【1】数日の経過の頭痛(

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