診療支援
診断

自己免疫性脳炎
††
Autoimmune Encephalitis
山村 隆
(国立精神・神経医療研究センター・神経研究所特任研究部長)

診断のポイント

【1】急性あるいは亜急性に進行する作業記憶障害,短期記憶障害,意識変容,傾眠,性格変化,精神症状。

【2】新規の局所神経症候,新規のけいれん発作。

【3】髄液細胞数増多(5/μL以上)および脳炎を示唆する頭部MRI所見。

【4】他疾患(感染性脳炎など)の除外は重要であるが,自己免疫性脳炎・脳症の前に感染性脳炎が先行するケースもあることに留意。

【5】自己抗体の検査結果の確認は,治療開始の前提にはならない。

緊急対応の判断基準

 中枢性低換気から人工呼吸器を要する場合や,難治性けいれん発作を伴う場合があり,状況に応じて集中管理・治療が可能な脳神経内科医の在籍する中核病院へ搬送する必要がある。

症候の診かた

 症候は辺縁系脳炎とびまん性脳炎で大きく異なり,さらに関与する自己抗体の種類によって異なる。

【1】辺縁系脳炎:精神症状,けいれん,意識障害,記銘力障害などの症候を示すことが多い。

【2】びまん性脳炎:精神症状,けいれん,意識障害に加え,不随意運動,筋力低下,感覚障害など多彩な症候を示すことがある。

検査所見とその読みかた

【1】髄液検査:細胞数増多(5/μL以上)を認めない例もある。IgG indexの上昇は参考になる。

【2】頭部MRI:辺縁系脳炎では両側の側頭葉内側に異常信号を認めるが,びまん性脳炎では画像所見が乏しいことが多い。

【3】脳波:全般性徐波化,両側の側頭部のてんかん性放電。

確定診断の決め手

【1】確定診断には自己抗体の証明が必要であるが,抗体が検出されない原因不明の自己免疫性脳炎・脳症も少なくない。

【2】抗体は血清と髄液両者で測定することが望ましい。

【3】自己抗体には,細胞内抗原に対する抗体(Hu,Yo,Ma2,CV2/CRMP5,GAD,amphiphysinなど)と,細胞表面に発現している受容体や細胞外に存在するシナプス関連蛋白に対する抗体(NMDA受容体,AMPA

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?