診療支援
診断

血管性認知症
Vascular Dementia
木村 和美
(日本医科大学大学院教授・神経内科分野)

診断のポイント

【1】認知症がある。

【2】CTやMRIで有意な脳血管病変がある。

【3】認知機能低下と脳血管病変の間に時間的関連がある。

【4】画像病変は認知機能低下を説明しうる。

症候の診かた

 血管性認知症の症状は,日常生活を障害する記憶障害とその他の認知機能障害(遂行機能/注意,言語,視空間認知)で,他の認知症をきたす疾患と大きな違いはない。脳の症状の現れかたは,突然発症したり,変動したり悪化したりすることがしばしばみられる。また,ある分野のことはできるが,他のことはできないという「まだら認知症」の特徴がある場合がある。

【1】遂行機能/注意や記憶障害。

【2】言語障害:失語症。

【3】視空間認知:同名性半盲,半側空間無視。

【4】感情失禁:感情のコントロールができず,すぐ泣いたり,怒ったりする。

【5】その他の神経症候:歩行障害,運動麻痺,構音障害,パーキンソニズム,排尿障害,抑うつ,夜間せん妄などの症状。

検査所見とその読みかた

【1】頭部CT,MRI

❶病型亜形として,多発梗塞性認知症,strategic single infarct dementia,小血管病性認知症,低灌流性血管性認知症,出血性血管性認知症,その他に分けられる(図12)。

❷認知機能に重要な役割をもつ部分は,前頭葉,側頭葉,後頭葉,視床,海馬である(図3)。また,皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy:CADASIL)(遺伝性,白質病変)やアミロイド血管症(microbleeds)などの画像に注意する。

【2】血管の評価

❶MR アンギオグラフィ(MRA),血管造影,頸部血管エコー:MRIで梗塞がなくても,脳血管に狭窄や閉塞があ

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