診療支援
診断

薬物乱用頭痛・慢性連日性頭痛
Medication-overuse Headache(MOH) and Chronic Daily Headache(CDH)
寺山 靖夫
(湘南慶育病院脳神経センター・センター長)

[Ⅰ]薬物乱用頭痛(MOH)

 片頭痛や緊張型頭痛など一次性頭痛を有する患者が,急性期頭痛治療薬や対症的頭痛治療薬を過剰に使用することによって,頭痛の頻度や持続時間が増加して慢性的に頭痛を訴えるようになった状態。

診断のポイント

 「国際頭痛分類 第3版」(ICHD-3)における診断基準(コード8.2)を表1に示す。

【1】以前から一次性頭痛をもつ患者において,頭痛が1か月に15日以上存在する。

【2】原因となる一次性頭痛として,片頭痛(65%)あるいは緊張型頭痛(27%)がある。

【3】1種類以上の急性期または対症的頭痛治療薬を定期的に1か月に10日以上,3か月を超えて乱用している。

【4】頭痛は薬物乱用のある間に出現するか,または著明に悪化する。

【5】乱用薬物の使用中止後,2か月以内に頭痛が消失,または以前のパターンに戻る。

症候の診かた

【1】急性期治療薬の効果が短時間かつ限定的となり,薬物乱用をさらに悪化させる。患者も医師も頭痛のために使用した薬剤によって頭痛がさらに悪化するというジレンマに陥ることが多い。

【2】ほとんどの症例では起床時から頭痛に悩まされることが多く,頭痛の正常・強度・部位はさまざまで,悪心,無力感,不穏,不安,集中力の低下,健忘,易刺激性を伴いやすく,わずかな精神活動や身体的活動で誘発されるためにADLと社会的活動は大きな制限を受ける。

【3】不安やうつの共存がよく認められるのが特徴で,問診のうえで重要なポイントである。

【4】片頭痛頓挫薬として欠かせないトリプタン系薬剤に起因するMOHも近年増加している。頭痛の重症化と頭痛頻度の増加が特徴的である。

検査所見とその読みかた

 そもそもMOHは一次性頭痛を有する患者に認められる頭痛であるため,原則的には画像検査や血液検査などから診断することは困難である。ICHD-3による診断基準と上述の症候を参考にした診断が重要であるが

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?