診断のポイント
【1】症状の原因となる器質的,全身性,代謝性疾患がなく,慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患である。
【2】逆流性食道炎,消化性潰瘍,胃癌など上部消化管の器質的疾患,全身性疾患や代謝性疾患の除外を常に念頭におく。
【3】診断にはRomeⅣ基準があり(表1図),4つの基本症状により食後愁訴症候群と心窩部痛症候群に分けられる。
【4】原因として,消化管運動の機能異常と内臓知覚過敏が,直接症状と関連する因子として想定されている。
【5】Helicobacter pylori除菌を施行したのち,6~12か月経過してディスペプシア症状が消失または改善している場合は,H. pylori関連ディスペプシアと分類される。
症候の診かた
【1】ディスペプシア症状には胃部不快感,食後のおなかの張り,みぞおちの痛みなど,心窩部を中心とする腹部症状が含まれている。
【2】病態には,多因子(胃酸分泌過多,H. pylori感染,ストレスを含めた心理社会的因子,感染性腸炎後,食事・生活習慣,遺伝的要因など)が症状の発現を修飾すると考えられており,これらの疾患背景も問診することが重要である。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査:一般的な血液・尿検査により,代謝性,内分泌性疾患を除外する。
【2】上部消化管内視鏡検査:胃十二指腸潰瘍や癌などの器質的疾患の除外を行う。
【3】腹部超音波検査:特に肝胆膵系疾患の除外を目的に行う。
【4】H. pylori検査:上部消化管内視鏡検査で,H. pylori感染胃炎を疑う所見があれば,感染の有無をチェックする。
確定診断の決め手
心窩部痛や胃もたれなどの,心窩部を中心とする腹部症状を慢性的に呈しており,身体所見や採血,内視鏡検査などで,器質的疾患が除外されれば診断できる。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】警告症候(原因が特定で