胃潰瘍とは,粘膜筋板を越える粘膜欠損の状態である。Helicobacter pylori(H. pylori)感染と非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)服用が二大成因とされており,そのほかにZollinger-Ellison症候群,NSAIDs以外の薬剤,特発性,アルコールや腐食性化学物質などの摂取などがまれながら成因となる。
診断のポイント
【1】症状は腹痛が最も多く,胃潰瘍では食後痛,十二指腸潰瘍では空腹時痛が典型的である。
【2】NSAIDs潰瘍では自覚症状はなく,貧血や吐血・下血で発症することがある。
【3】上部消化管内視鏡検査にて潰瘍性病変を発見する。
【4】内服薬もチェックする必要がある。
緊急対応の判断基準
腹部症状の有無にかかわらず,急激な貧血の進行や吐血・下血がある場合は緊急対応が必要となる。
症候の診かた
【1】上腹部痛・心窩部痛などがみられるが,NSAIDsを含む薬剤起因性の場合は腹部症状を認めないことも多い。
【2】腹痛のない場合は出血や穿孔など重篤な症状で発症することがあるので,内服歴などに配慮が必要である。
検査所見とその読みかた
【1】上部消化管内視鏡検査:確実な診断法となる。
【2】生検・組織学的検査:胃潰瘍や吻合部潰瘍では癌との鑑別が重要なことがあるため行う必要がある。
【3】胃潰瘍の好発部位:胃角部小弯である。H. pylori感染による萎縮性胃炎が進行した症例では体部小弯や後壁にも好発する。NSAIDs潰瘍では,浅くて小さい潰瘍が前庭部に多発することが多い。H. pyloriによる潰瘍は再発することが多く,問診による過去の潰瘍歴は重要である。
確定診断の決め手
上部消化管内視鏡検査を行い,潰瘍性病変を確認し,生検にて悪性が否定できれば確定診断となる。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
胃癌(→)との鑑別が重要となる。潰瘍に向かって集中するひだの形状の不整(こ