診療支援
診断

十二指腸潰瘍
Duodenal Ulcer
岡田 裕之
(岡山大学大学院教授・消化器・肝臓内科学)

診断のポイント

【1】30~40歳台に多い。

【2】Helicobacter pylori(Hp)現感染。

【3】非ステロイド性消炎鎮痛薬,アスピリンを内服。

【4】夜間空腹時上腹部痛。

【5】胃・十二指腸潰瘍の既往。

緊急対応の判断基準

【1】出血性ショックをきたしている場合は,輸液・輸血を行って循環動態を安定させる。

【2】吐下血をきたしている場合は.緊急内視鏡検査を行う。

【3】内視鏡的止血が困難な場合は,緊急画像下治療(interventional radiology:IVR),緊急開腹手術を行う。

【4】上腹部の著明な圧痛,反跳痛,筋性防御などを認めた場合は潰瘍が穿孔した可能性もあるので緊急CT検査のうえ,緊急手術も考慮する。

症候の診かた

【1】上腹部痛:空腹時痛が多い。背部痛も起こりうる。

【2】悪心,嘔吐,食欲不振,腹部膨満。

【3】吐血,黒色便。

検査所見とその読みかた

【1】スクリーニング検査:末梢血検査で貧血が認められる場合は潰瘍出血を起こしている可能性も考慮する。

【2】X線,CT:腹膜刺激症状を認める場合に行い,穿孔の徴候であるfree airの有無を確認する。

【3】難治性の場合は血液検査や画像検査を用いて多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1型)の一病変であるZollinger-Ellison症候群の鑑別を行う。

❶ガストリン産生腫瘍,高ガストリン血症の有無をチェックする。

❷副甲状腺腫や下垂体腺腫との合併の有無をチェックする。

【4】上部消化管造影検査:十二指腸にニッシェを認める。

【5】内視鏡検査

❶主として十二指腸球部に潰瘍病変を認める。

❷胃潰瘍の「崎田・三輪分類」に準じて病期分類をしており,活動期(A1,A2),治癒期(H1,H2),瘢痕期(S1,S2)に分類される(図1図2図3)。

確定診断の決め手

 上記,内視鏡検査あるいは上部消化管造影検査で確定できる。

誤診しやすい疾患との鑑

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