以下,厚生労働省研究班による「門脈血行異常症ガイドライン2018年改訂版」に基づいて記す。
[Ⅰ]特発性門脈圧亢進症(idiopathic portal hypertension:IPH)
診断のポイント
【1】門脈血行の異常から,食道静脈瘤や腹水などの門脈圧亢進症症状をきたす。
【2】脾腫,貧血,門脈圧亢進症を示し,原因となるべき肝硬変,肝外門脈・肝静脈閉塞,血液疾患,先天性肝線維症などを証明し得ない疾患とされる。
【3】通常,肝硬変に至ることはなく,肝細胞癌の母地にはならない。
【4】年間受療患者数(有病者数)の推定値は1,000人(810~1,300人)である(2014年)。男女比は約1:2.7と,女性に多い。
【5】確定診断時の年齢は,40~50歳台にピークを認め,その主症状の80%は脾腫と食道静脈瘤である。
緊急対応の判断基準
急性の経過をとるものは,専門家のいる施設にすみやかに紹介し,治療方針を決定する。
症候の診かた
脾腫,貧血,門脈圧亢進症を示す。
検査所見とその読みかた
高度の血小板をはじめとする血球減少,エコーやCTで,肝硬変を呈していないにもかかわらず,著明な門脈の拡張と脾腫を認めることで疑われる(図1図)。
【1】画像診断
❶肝静脈造影:しだれ柳様変化が診断の根拠となる。肝静脈楔入圧では,しばしば肝静脈-静脈吻合により門脈圧の上昇を反映しないことが多い。よって,侵襲的ではあるが,経皮経肝門脈造影が門脈圧の実測を得ることができ有用である。
❷造影CT:著明な脾腫と門脈の拡張を認め,比較的太い肝内門脈が肝表に近い部位で認められることもある。
❸エコー:肝脾硬度を測定できるエコーにより,肝硬度が低いにもかかわらず脾硬度が著明に高い場合に本疾患を疑うことが可能となった。
【2】病理検査
❶肝臓の肉眼所見
■肝萎縮はあるものからないものまである。肝表面は平滑から波打ち状を示すものがあり,割面で
関連リンク
- 今日の治療指針2023年版/門脈圧亢進症
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/Klippel-Trénaunay症候群,Parkes Weber症候群
- 臨床検査データブック 2023-2024/特発性門脈圧亢進症(IPH)
- 新臨床内科学 第10版/3 肺動静脈瘻
- 新臨床内科学 第10版/(1)特発性門脈圧亢進症
- 臨床検査データブック 2023-2024/原発性硬化性胆管炎(PSC)
- 新臨床内科学 第10版/(2)肝外門脈閉塞症
- 新臨床内科学 第10版/2 バッド-キアリ症候群
- 今日の診断指針 第8版/脾腫
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- 今日の診断指針 第8版/門脈圧亢進症
- 今日の小児治療指針 第17版/無脾症候群