診療支援
診断

肝寄生虫症
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Parasitic Liver Disease
清家 正隆
(大分循環器病院・副院長(消化器内科))

診断のポイント

【1】病歴が重要である。居住地,職業歴,食事の嗜好(食文化),海外渡航歴なども疾患を疑う根拠となる。

【2】好酸球増多症や肝障害。

【3】各種画像診断。

【4】診断が疑われれば,虫卵の確認。

【5】血清学的診断。

症候の診かた

【1】肝エキノコックス症

❶イヌ,キツネとの接触,北海道居住など問診が重要である。感染症法で4類感染症に分類されている。

❷自覚症状はなく,発症まで普通10~15年かかる。

❸上腹部膨満感などの不定愁訴,肝腫大,腹部膨満感,食欲不振,全身倦怠感,右季肋部痛などの自覚症状が出現。

❹末期には黄疸,腹水,浮腫などが出現し,肝不全になる。

❺2017年の報告数は30例。

【2】日本住血吸虫症

❶日本では甲府盆地,筑後川流域,広島で流行した。

❷産卵された虫卵は血行性に各臓器の細動脈に塞栓し,肝腫大,肝硬変,腹水,肺高血圧,肺性心の原因となる。現在では新たな感染者はいない。

❸C型肝炎合併例があるので,肝硬変,肝癌に対する対策が必要である。

【3】肝吸虫症

❶肝吸虫が肝胆道系に寄生して生じる疾患である。

❷淡水魚の生食嗜好歴が重要である。

❸少数寄生では無症状で,虫体が多い場合は,食思不振,腹部膨満感,下痢,上腹部痛が出現する。

❹肝障害が進行すると肝硬変になり,腹水貯留や,黄疸が出現する。

❺胆管癌を合併することもある。

【4】肝蛭症

❶肝蛭はウシなどの家畜の胆管に寄生する大型の吸虫で,まれにヒトに寄生する。

❷ヒトでは感染幼虫のメタセルカリアが付着したセリ,ミョウガ,クレソンなどの摂取,ウシの肝臓のレバーや腸管の生食により感染する。

❸急性感染症では腹痛,発熱,悪心,嘔吐,黄疸,咳,体重減少がみられる。

❹慢性感染症では無症状のこともあるが,腹痛,胆石,胆管炎,閉塞性黄疸,膵炎に発展することがある。

❺報告数は年間数~10例程度。

【5】有鉤囊虫症

❶有鉤囊虫症は有鉤条虫症に続く2次的な寄生虫症で

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