診療支援
診断

慢性心不全
Congestive Heart Failure
坂田 泰史
(大阪大学大学院教授・循環器内科学)

診断のポイント

 診断の流れを図1に示す。

【1】糖尿病,高血圧,心機能低下をきたす薬剤の投与歴などの心不全のリスク因子。

【2】労作時呼吸困難,頸静脈怒張,浮腫,四肢冷感など典型的な症状や身体所見異常。

【3】胸部X線写真上,心拡大や肺血管陰影増強など肺うっ血所見。

【4】脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)またはBNP前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)高値。

【5】心エコーでの心機能低下所見。

緊急対応の判断基準

【1】慢性心不全は,過労,塩分過剰摂取,感染,服薬コンプライアンス低下などに伴い急性増悪をきたすことがある。

【2】体重増加を伴う運動耐容能低下,四肢冷感などを急速に出現した場合は,専門医にコンサルトすることが望ましい。

症候の診かた

【1】呼吸困難:最も重要な症状である。

❶運動器異常を伴う患者でも,ある程度活動している患者なら以前との比較により増悪を診断しうる。

❷増悪時には起坐呼吸,夜間発作性呼吸困難などをきたす。

【2】四肢冷感

❶心拍出量低下に伴い,末梢血管抵抗が上昇し四肢冷感をきたす。

❷他覚的に所見を得るには,指先より二の腕あたりを触診するほうが外気温に左右されずよい。

【3】浮腫

❶前脛骨部,顔面,眼瞼,陰囊などに自覚する。

❷体重増加を伴うことが多い。

【4】心音・呼吸音異常

❶左房圧上昇に伴い,Ⅲ音を聴取することがある。ただし,若年健常者でも聴取することがあるため注意する。

❷肺野において水泡音を聴取する。

❸背部まで丁寧に聴診する。

【5】頸静脈怒張

❶静脈圧上昇により,吸気時に顕著となる頸静脈怒張を認める。

❷仰臥位では健常者でも認めることがあるが,坐位にても認めた場合は心不全を示す異常所見と考えてよい。

❸観察は内頸静脈により行うが,外頸静脈の坐位臥位変化も参考にする。

検査所見とその読みかた

【1】胸部X線写真

❶心拡大を認めることが多いが,心不全症状を呈していても必ずしも拡大し

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