診療支援
診断

横隔膜ヘルニア
Diaphragmatic Hernia
鰤岡 直人
(鳥取大学教授・保健学科病態検査学講座)

 横隔膜ヘルニアは,横隔膜の欠損孔から腹部臓器が胸腔内に脱出した状態であり,先天性,後天性,外傷性に大別される。

[Ⅰ]Bochdalek孔ヘルニア

 先天性横隔膜ヘルニアの代表的疾患。Bochdalek孔がヘルニア門となる(図1)。約70%が出生前に診断されている。

診断のポイント

【1】先天性は出生後早期からチアノーゼ,呼吸障害などの呼吸窮迫症状を認めることが多い。

【2】胸部X線写真で患側胸腔に消化管ガス像,縦隔陰影の健側への偏位が特徴所見(図2)。

【3】約90%が左背側横隔膜に生じる。

【4】主に患側肺の低形成を認める。

【5】出生後の新生児遷延性肺高血圧症。

緊急対応の判断基準

【1】出生前診断例:管理可能な小児科医と小児外科医のいる病院で計画出産する。

【2】出産後診断例:治療可能な病院に移送。

症候の診かた

【1】腹部視診:腹部臓器が胸腔内に脱出することによる腹部の陥凹。

【2】胸部聴診:患側肺の呼吸音低下。

【3】まれに認める後天性は,症状が乏しい。

検査所見とその読みかた

【1】出生前:腹部超音波検査や胎児MRI(図2)によって診断する。

【2】出生後:胸部X線写真によって患側胸腔に消化管ガス像,縦隔陰影の健側への偏位の程度を確認する(図2)。

確定診断の決め手

【1】超音波検査や胎児MRIによって患側胸腔内に脱出した腹部臓器が観察される。

【2】出生後の胸部X線写真で特徴的所見を確認する。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

‍ 横隔膜弛緩症先天性囊胞性腺腫様奇形が鑑別診断に挙がるが,胎児MRI,胸腹部CTによって鑑別は可能である。

確定診断がつかないとき試みること

 出生後,診断が難しい症例は,胸腹部CTを検討する。

合併症・続発症の診断

【1】心臓超音波検査は遷延性肺高血圧症の評価に有用。

【2】先天性心疾患,染色体異常,腸回転異常を合併することがある。

予後判定の基準

【1】肝臓の胸腔内への脱出例

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