診断のポイント
【1】先行する咽頭感染または皮膚感染(膿痂疹):病原体としてA群β溶血レンサ球菌が最多である。
【2】3歳以降の小児~若年者に多い。
【3】血尿・浮腫・高血圧が3大徴候である。
【4】補体価の低下(C3優位)とASO・ASKの上昇がみられる。
緊急対応の判断基準
溶連菌感染後急性糸球体腎炎ではしばしば浮腫や尿量減少,血圧上昇など体液貯留傾向がみられるが,これが顕著かつ持続する場合には血液透析などの腎代替療法が一時的に必要となる場合もある。特に,うっ血性心不全による呼吸不全や酸素化障害が生じた場合にはすみやかな除水が必要となるため,緊急透析の適応について急いで判断するべきである。
症候の診かた
【1】浮腫:水・ナトリウムの再吸収亢進により全身性浮腫が認められることが多い。程度はさまざまであるが,小児例では患者の約3分の2に認められるとされる。
【2】肉眼的血尿:顕微鏡的血尿はほぼ必発であるが,肉眼的血尿は患者の約30~50%に認められる。
【3】高血圧
❶程度はさまざまであるが,一過性の血圧上昇が半数以上の患者で認められる。水・ナトリウム再吸収亢進による体液量過剰が関与していると考えられている。
【4】感染症状
❶感染関連の急性糸球体腎炎の場合,腎症状に先行して感染症状が認められる。
❷溶連菌感染後糸球体腎炎の場合,上記症状(【1】~【3】)に先行して急性咽頭炎(扁桃炎)や膿痂疹が存在していることが多いが,これらの感染症状から腎炎発症までの期間は前者で1~3週間程度,後者で3~6週間程度である。
❸溶連菌感染による咽頭炎の可能性を評価するスコアリングシステムとしてCentor Scoreがある(表1図)。このスコアで2点以上であれば溶連菌感染迅速診断キットによる検査を施行することが勧められる。ただし,腎炎発症の段階では陰性化していることも多いため,あくまでも参考として用いるにとどめるべき
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