診断のポイント
【1】血尿・蛋白尿がない,または軽微。
【2】緩徐な腎機能低下。
【3】両側の腎萎縮(皮質菲薄化),左右差なし。
【4】腎障害発症以前に高血圧を指摘されている(高血圧歴がなくても加齢や虚血でも腎硬化症を呈する場合がある)。
【5】頸動脈内膜肥厚,心肥大,眼底の動脈硬化所見を参考にする。
緊急対応の判断基準
【1】加速型-悪性腎硬化症(高血圧性緊急症:拡張期血圧が120~130mmHg以上,腎機能障害が急速に進行,放置すると心不全,高血圧性脳症,脳出血などが発症する予後不良の病態)には専門医療機関へ紹介が必要となる。
【2】悪心・嘔吐など腎不全症状が出現した場合には,すみやかに専門医療機関に紹介する。
【3】高カリウム血症(血清カリウム値6.0mEq/L以上)を呈し,心電図上異常を示す場合には循環器内科を含めた専門医療機関に紹介する。
【4】消炎鎮痛薬やレニン-アンジオテンシン系阻害薬の投与,脱水による急性腎障害発症時には,専門医療機関に紹介する。
症候の診かた
【1】自覚症状:末期腎不全まで症状は出現しない。
【2】浮腫は伴わない。
【3】動脈硬化病変が存在するため,頸部,腹部の血管雑音を確認する。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査:腎機能障害(eGFR<60mL/分/1.73m2)と尿蛋白の程度を確認後,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)分類による重症度を決定し,腎不全,心血管病発症,死亡リスクを評価する。
【2】尿検査
❶早朝尿にて尿潜血,尿蛋白ともに陰性~軽度陽性,かつ尿沈渣にて円柱や糸球体型赤血球を認めないことを確認する。
❷高度腎機能障害時には尿蛋白が高度に出現することもある。
【3】画像検査
❶腹部超音波検査にて両側腎の萎縮,腎皮質の菲薄化を認める(おおむね長径10cm程度が正常であるが,体格によって萎縮を判断する)。
❷腎サイズに左右差があ