近年,臨床的に糖尿病による腎障害と推測される場合,糖尿病性腎臓病(DKD)という用語が用いられている。一方,腎生検にて典型的な糖尿病による組織障害を認めた場合をdiabetic nephropathy(糖尿病性腎症)として使い分ける傾向がある。しかし,明確な定義や基準は定まっていない。
診断のポイント
【1】微量アルブミン尿の出現。
【2】約5年以上の糖尿病罹病期間。
【3】糖尿性網膜症の存在。
【4】早期は高度の血尿を認めない。
緊急対応の判断基準
【1】進行した糖尿病性腎症例では,高度の蛋白尿を伴うネフローゼ症候群を呈することがある。全身性浮腫に加えて,胸水が著明な場合は,緊急の対応が必要である。
【2】低酸素血症や起坐呼吸を認める場合は,挿管のうえ陽圧呼吸やECUMを含めた集中管理が必要である。
症候の診かた
【1】アルブミン尿:早期診断には,アルブミン尿測定が必須である。尿蛋白定性検査で「-」あるいは「±」の症例にこそ,アルブミン尿測定を定期的に行う。
【2】尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)やⅣ型コラーゲン:早期診断マーカーとして有用である。
【3】血尿:早期腎症では,血尿が陰性のことが多いが,進行した腎症の場合は,血尿をしばしば認める。血尿を伴うだけでは,腎症を除外できない。また,時に網膜症を認めない腎症例も存在する。疑わしい場合は,腎生検で確認する必要がある。
【4】腎のサイズ:腎機能が低下した症例では,腎のサイズも参考になる。腎尿管膀胱部単純撮影(KUB)や腹部エコーで,腎の萎縮がみられない,あるいは腫大している場合は糖尿病性腎臓病が疑われる。
【5】腎機能:糖尿病性腎臓病は,幅広い臨床像を呈する。特に,急激に腎機能低下を示す症例が存在し,rapid declinerとよばれる。臨床データだけで判断することは困難であり,腎機能の定期的な評価が必要である。
【6】アルブミン尿,蛋白尿