診断のポイント
【1】微熱,食欲不振,易疲労感,全身倦怠感,無月経,性欲低下,低血圧症など,非特異的な症状によって受診する場合が多い。
【2】性腺機能低下を伴う場合,眉毛や髭の減少などの特徴的顔貌・容姿を呈するので,見逃さないようにする。
【3】低ナトリウム血症,低血糖を認めることが多い。
【4】頭頸部の画像診断中に偶発的に,間脳下垂体腫瘍として発見されることがある。
【5】副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)系や甲状腺刺激ホルモン(TSH)系のみならず,性腺系や成長ホルモン(GH)系もQOLにきわめて重要な役割を果たしているため正確な診断を要する。
緊急対応の判断基準
低血糖や低ナトリウム血症など,副腎クリーゼを疑う異常を認めた場合は,生理食塩液にブドウ糖を混じた輸液に加え,ヒドロコルチゾン静注を行い,専門施設へ移送する。
症候の診かた
障害される下垂体ホルモンの種類や程度によって,症状は異なる(表1図)。
【1】ACTH低下の場合:全身倦怠感,食欲不振,体重減少,嘔気,腹痛,重度の場合は意識障害。
【2】TSH低下の場合:耐寒性低下,不活発,皮膚乾燥,徐脈,こむら返り。
【3】ゴナドトロピン低下:月経異常,性欲低下,陰毛・腋毛脱落。
【4】GH低下:小児の低身長症,成人でも意欲の低下や肥満などに注意する。
【5】女性の場合は周産期の異常(出産時大量出血:Sheehan症候群など)について確認する。
検査所見とその読みかた
【1】一般検査では以下の症状を呈しやすい。
❶ACTH低下:低ナトリウム血症,低血糖,貧血,好酸球増多,CRP軽度陽性。
❷TSH低下:CK増加,コレステロール増加など。
❸GH低下:肝機能障害(NASH,NAFLD)。
【2】内分泌検査
❶ホルモン基礎値測定の際は,下垂体ホルモンと標的臓器のホルモンを同時に測定する(ACTHとコルチゾール,TSHと遊離T4,GHとIGF-I,性腺刺激ホルモン
関連リンク
- 今日の診断指針 第8版/Addison病
- 今日の診断指針 第8版/原発性甲状腺機能低下症
- 今日の診断指針 第8版/Bartter症候群/Gitelman症候群
- 今日の治療指針2023年版/下垂体腺腫
- 臨床検査データブック 2023-2024/副腎皮質刺激ホルモン〔ACTH〕 [保] 189点(包)
- 臨床検査データブック 2023-2024/CRH(CRF)負荷試験(コルチコトロピン放出ホルモン負荷試験) [保] 1,200点(包)
- 新臨床内科学 第10版/1 先端巨大症
- 新臨床内科学 第10版/3 高プロラクチン血症
- 新臨床内科学 第10版/4 下垂体機能低下症
- 新臨床内科学 第10版/(1)副腎腺腫,副腎過形成(ACTH非依存性大結節性副腎皮質過形成)
- 今日の診断指針 第8版/下垂体腺腫
- 今日の診断指針 第8版/先端巨大症